きようなできごと

記憶力が足りない

競馬場はなかった

「はい、今年は2020年ですよ」

「ケイバジョウ?それはなんですか?」

「馬が?競争する?それをここでやってる?」

「いやあ、そんなの聞いたことないです」

「ええ、2020年ですよ」

「ギャンブル?それなんですか?」

「ええ?そんなことしていいんですかね?」

「だから、2020年!」

「いやあ、そんなもの存在しませんよ、ええ」

 

 

 

「もしもし、私です」

「ええ、A地点で話しました」

「ちゃんと、競馬場などない話しました」

「ところで」

「あの人、ふしぎな車に乗って、ええ」

「ふしぎなかっこうをしていて」

「あの人、いったいなんなんですか?」

「あ、いえ、私はアルバイト料が出ればいいんで」

「それじゃ、失礼します」

 

 

 

「あ、今年は2020年ですよ」

 

 

日常

また、風が吹いた

きょうがいつなのか

それはわからない

 

俺は

寝床を飛び出し

外に出る

 

おもむろに

木を切る

それは、白樺

 

トントントン

トントントン

俺はこのリズム好き

 

そして

羊の毛を刈る

羊は俺をじっと見つめる

 

やっぱり

木を切る

まだ足りない

 

トントントン

トントントン

本当にこのリズム好き

 

そして

羊の毛を刈る

牛は俺を見ている

 

白樺のなえを拾う

俺はこれが嫌い

 

そして

木を切る

石の斧こわれる

 

そして

羊の毛を刈る

はさみもこわれる

 

焼いた豚肉を食う

うまい

 

もう日暮れ

夜まで釣り

 

釣果は木のうつわ

 

日が暮れる

きょうも素敵な日だったよ

兄さん

 

眠る

羊が俺をまたぐ

 

また、風が吹いた

きょうがいつなのか

それはわからない

 

 

 

となりの部屋のヤツがとにかくうるさい


俺はいらだっていた
となりの部屋の住人が
とにかくうるさい

 

現代には
めずらしくも
ひっこしのあいさつに
やってきた時
はじめて会ったが
やせ型のおとなしそうな男
だったのに

 

夜になると
部屋の中で暴れだすようで
長く続くことはないが
うるさいことはうるさい

 

うちは
アパートの二階
三部屋あるうちのまんなか


だから
時々は
ヤツの部屋側の壁を
おおきな音を鳴らして
たたいてやった

 

すると
しばらくはおさまる

少し時間をあけて
また暴れだす
俺はついに
壁をたたきながら
「うるせえぞ」
とどなるようになった

 

大家さんに
相談をしてみると
ヤツはすぐに出ていく
一時的なものだから
と言って
それ以上は話をしない

 


ある日の夜
またいつもの如く
ヤツは暴れだした
だが
きょうは様子が違う
なんというか
いつもより人数が多い
そんな気がする
それにすぐに静かになり
また
外へ出ていく音がした

 

俺は
自分の部屋を少しあけて
ヤツの部屋の玄関あたりをみた

ドアが開け放してある

俺は
すぐにヤツの部屋の様子を
確認に行った

 

部屋は
あらされており
ところどころ
血しぶきが飛び散っていた
一体、なにがおこったのだろう

 

複数人いて
部屋にヤツはいない
ということは
連れ去られたのではないか?

 

急いで警察に
とも思ったが
俺は自分の痕跡を
残さないように
そっと自分の部屋にもどった

 

そして
「やったぞ、これで静寂が」
俺は自分の部屋でさけんだ

 

その時
玄関から物音がした
そうだ
となりのヤツがいなくなった
あまりの喜びに
玄関をしめていなかった

 

そこには
男が立っていた

「あ、どうもこんばんわ」
俺はあいさつをした
こいつは
ヤツと反対側のとなりの住人だ

 

彼は
長い包丁をにぎっていた
「おまえ、いつもいつもうるさいんだよ」
俺は
その包丁で何度も何度も
刺された

 

部屋は
とても静かになった

 

 

ストーカーが見てる


最初は
手紙だったという

 

「なんか変な手紙きちゃって」
美容師のエムさんは
同僚に手紙をみせた
そこには

 

「はじめてみたときから
君のことが」

 

という文章ではじまる
熱烈なラブレターだった

 

「え、これラブレターじゃん」
「へえ、誰からなの?」
まわりは歓喜の声をあげたが
エムさんはしずんでいた
「あの、この前きたお客さんの」

 

その方は
前の週にきたお客様で
エムさんは
先輩美容師のアシスタントとして
ついていたお客様、ワイさんだった

 

先輩美容師が
髪を切って洗髪したあと
エムさんはドライヤーをかけていた

 

その時
鏡越しにワイさんが
エムさんのことを見ているのを
エムさん自身もわかっていた

 

「でも、あんまりタイプじゃないから」
エムさんはそう言うと
作業にもどっていった
思えばこれが、はじまりだった

 

手紙が届いた
次の週
その美容室に
荷物が届いた

 

それは、エムさん宛てで
送り主は、あのワイさんだった

 

そのおおきな箱は
おおきいわりに、軽かった

 

開店前の準備中に
届いたそれを
エムさんとともに
従業員がまわりをかこみ
開けることに

 

なかみは
バラの花束だった
手紙もそえてある

 

以前の手紙の件を知らない者は
「素敵な贈り物じゃないか!」
と声をあげた
知っている者は
エムさんの様子を見守る

 

エムさんは
ふるえながら泣きながら
裏に行ってしまった

 

その時
この贈り物は
以前きたお客様からのもので
という事が説明され
エムさんとして
あまり、受け取りたくはない
ものであることを
従業員全員が知ることになった

 

さらに
次の週
開店準備中の美容室で
エムさんは
とんでもない姿であらわれた
それは
白いクリームまみれで
さらに紫色の液体をかけられた状態の
エムさんだった

 

エムさんが言うには
先日、バラの花束の贈り物をした
ワイさんが
通勤中のエムさんの前にあらわれ
なぜだか
片手には、ワイングラス
もう片方には
小ぶりのウェディングケーキをかかえ
待っていた
なんというか
ワイさんの中では
もう、結婚式をあげる
ということになっているらしい

 

それを
エムさんが通るであろう道端で
テーブルにはエムさんのグラスも
用意され
さながら
ふたりだけのウェディングパーティー

 

かなり混乱したエムさんは
ワイさんを振り切ろうと
テーブルをよけて
歩きだすと
そこに歩道ぎりぎりに
車がうしろからきて
エムさんは
それをよけた

 

テーブルはひっくり返り
ワイさんは倒れ
エムさんは
頭から赤ワインと
ケーキをかぶることになった
ということだった

 

「もう、怖いよ」
ふるえながら泣いているエムさん
さすがに今回は
ということで
店長から警察に連絡
ただ
「周辺の警備を強化する」
ということに

 

気になるのは
最初以来
ワイさんは
店にはあらわれない
ということだった
エムさんに会うのを
妨害されるのを警戒しているのか

 

そんな中
ついにワイさんがあらわれた
その日は
強い雨が降っていた

 

開店準備していた店内に
店の外から
「エムちゃーん、エムちゃーん」
という声が聞こえた
すでに
出勤していた美容師たちが
外に出ると
なぜだか
アロハシャツをきた
あとスーツケースをひいた者が
雨の中外で叫んでいる
「エムちゃーん、ハワイ行くよー」
周辺の住民も外に出て
その様子を見ている
美容師たちは
それを呆然をながめた

 


「なにそれ、すーげーじゃん」
「ものすごいストーカーだね」
「結婚式のあとは、新婚旅行か」
この話を
聞かされた面々は
それぞれ感想をもらす

 

「でもさ、あらわれたなら捕まるだろ?」
「そうだよなあ」
「違う」
話し手のエヌ彦は
まわりを制した
「違うんだ」

 

その
アロハシャツ姿の者は
エムさんでした
そもそも
ワイさんは手紙など
バラの花束など
送っていなかったのです

 


「全てはエムさんの自作自演」
エヌ彦はつづける
「そして」

 

エヌ彦たちは
居酒屋で怖い話を順番にしていた

 

エヌ彦は居酒屋の入り口付近を
指差して
「あそこにいるのが、僕につきまとっている
エムさんだ」

 

入り口に近くのテーブル席に座る
白いワンピースの女は
少しだけ笑みを浮かべ
ビールジョッキをあおった

 

 

 

重要なビデオ映像

最近はね

暗い部屋でひとりでいてね

テレビはつけたまま

ひざをかかえてね

なにかはじめ妖刀ね

 

怖い話のテキストを

読んだり

その朗読の動画を見たり

しているんですよね

 

怖い話に

限らないんだけど

やっぱり

これあきらかに創作じゃん

っていうの

あるんですよね

 

最後のところで

その語り手が死んじゃう

とかね

 

じゃあ

誰が書いているのよ

っていうね

 

それでね

いろいろ考えたんだけど

この創作というのも

実体験をもとにした創作

だったとしたら

って

考えが浮かんだ

 

ようするに

そのまま事実をつづったら

ただの事件なんだけど

それをさ

エンタメ化するわけよね

事実をベースにしながら

ちゃんとフィクションになってるやつ

 

それを

考えはじめたら

なんだか

よけいに怖くなってきちゃってねえ

 

それでね

ぼくが

妻を殺した時の話をね

したいと思う

 

 

 

 

この後

詳細な犯行の様子を

この男がしゃべる

と思われたが

そこで話はとぎれ

映像内で男は

カメラにほうにむかって

倒れる

 

そして

横倒しになったカメラには

もがき苦しんでいる男の様子を

画面端のほうでとらえている

 

薄暗い部屋の中

そのままカメラは

映像を撮り続けているが

時々

おかしな光が映り込む瞬間が

いくつかあったという

 

この映像は

いまも保管されているという

 

 

規制

明け方の部屋の中

俺は眠れないでいた

あいつの事が

あたまから、はなれない

 

テーブルに置いた

端末を手に取り

SNSのアプリをひらく

 

言ってやらなければ

ならない

手がふるえる

 

その時

うす暗かった部屋が

外から照らされた

「なんだ?」

 

ドアが蹴破られて

武装したやつが

こちらに銃を向ける

「端末を置いて、かべに

手をつけろ」

俺はしたがった

 

「お前は、いま

SNSに書き込もうとしたな?」

「はい」

「それは

同僚に対するものだな」

「なぜ、それを」

「それを書くと

重大な損失が出るという予測が

出ている」

最近では

強力な規制が出ているとは

聞いていたが

ここまできているとは…

 

2XXX年

かんたんには

ネットに書き込めない

そんな時代

 

俺は

まだ未遂だったので

罰金と奉仕活動で済んだ

実際に書き込んでいたら…

考えるのも

恐ろしい

 

 

 

僕は

時々こういう文章を

書いては

ブログに書いている

「さて、寝るかな」

 

その時

うす暗い部屋は

外から照らされた

 

ドアを蹴破り

だれか入ってくる

「いますぐ

ブログの内容を消せ

さもないと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おかしな地震の話

先日、こういう話を聞いた

 

ある地方で

大きな地震がおきた

特別被害はなかったのだが

あるコンビニだけ

屋根が崩れてしまったが

店員は逃げ出して無事だった

 

ただ

崩れた屋根のすきまに

おそらく店にいた客(Aさん(仮名))が

半日ほどとじこめられていて

すぐに病院に運ばれたて

無事だったが

様子がおかしいという

 

脱水症状があり

意識が混濁しているようだった

 

確かに

とじこめられていた間

日中は暑かった

だが

コンビニなため

商品の水などは

棚から落ちて

そこら中にあったのだが

飲んでいた様子はなかった

しかし、栓をあけたものは

いくつかあった

ただ、飲んではいなかったらしい

 

Aさんは

けがなどはなかったが

いまも、うわごとをいっていて

意識がはっきりしないという

 

この件に関して

周辺で話を聞くと

Aさんと同級生だというBさんに

話を聞けた

 

Bさんは

今回の話、おそらく

「Cの呪いだ」

とはっきり言った

Cさんとは、AさんBさんの同級生で

すでに亡くなっている

 

AさんとCさんは学生の時

同じ部活に所属していた

Aさんはレギュラーで

Cさんは補欠だったそうだ

 

夏休みの間の練習中

Cさんが倒れ、そのまま亡くなった

原因は、重度の脱水症状

 

その日

Cさんは飲み物を持っていなかった

だが

他の部員の話によれば

AさんがCさんや他の部員の

飲み物を勝手に飲む姿が

度々目撃されていた

そして

Aさんは、Cさんに

水道の水を飲まないように

していたという

 

だが

これは後からわかった話で

Aさんからの報復をおそれた他の部員は

Aさんの行為について

言及する事はなかった

 

その後

Aさんは度々

まぼろしを見て取り乱す事があったという

その時決まって

「Cが来る、Cが来る」

と言っていた

 

そして

今回、入院して手当を受けていたAさんを

見舞いに行った時

やはり、うわごとでCさんについて

言っていた、とBさんは話してくれた

 

実際のところを

Aさんに聞いてみたかったのだが

退院間近の先日

行方不明になっていた

 

呪いなんて

本当にあるのだろうか

 

タピオカのブルース

「俺、なんていうか怖いんだ」

キョウコが席に座ると

すぐに、マサルは話しだした

 

なにしろ

タピオカが怖いという

 

 

 

「なんか、イモをなんかするとできるらしいよ」

どこかで聞いた話を

キョウコは思い出した

 

「それ本当か?きっとなんか他の星から

来ているんじゃないかな」

出た

マサルのふしぎな事は宇宙論

もうどれだけの事を

疑えば気が済むのか

 

「実は、さっきこういう事があったんだ」

マサルの話はこうだ

家の近くの公園を歩いていたら

そこに

ドリンクスタンドが

あたらしくできており

当然

タピオカミルクティーを売っていた

 

マサル

いまいましいものを見る目で

ドリンクスタンドを眺めながら

公園を出ようと出口にむかう

 

ふいに

芝生のあいだに

なにかあるのを見つけた

 

タピオカだった

公園の芝生に

時々あるわかめみたいなやつ

あれと同じ感じで

そこにタピオカはあった

 

たまたま、あそこで

こぼしたやつがいた

そう考えて

急いで、マサルは公園を出た

 

そうは思っても

なにか気になる

ふと、歩道を見るとタピオカ

店の窓枠のすみにタピオカ

前を歩くひとのポケットから

こぼれおちるタピオカ

 

いやいやいやいや

いったいなんなんだよタピオカよ

 

なんだか

気分が悪くなってきたマサル

駅前の雑踏のなか、立ち止まる

その時見たのだ

 

白昼堂々

ゲロをはくおじさん

おいおい、昼間から酔っぱらいかよ

だが

マサルは目を離せなかった

 

おじさんは

タピオカをはきだしていた

タピオカミルクティー

もどしているのではない

純粋に

タピオカだけを

大量に道の側溝にはいていた

 

マサルは、道に座り込む

おじさんは

耳や鼻からも

タピオカをはきつづけていた

 

そして

キョウコを呼び出し

いまにいたる

 

だから

いずれ街がタピオカに

 

 

というのが

マサルのタピオカによる

人類の絶滅への道だそうだ

 

そこまで

きいて当然あきれたキョウコだったが

実は

なんだかわからない物質で

できていたものが

大量に発生して

地球をおおいつくす

なんてのは

確かに、怖いなあ

なんて

 

 

マサル

うつむいたまま、なにも話さない

「ねえ、どうしたの?」

キョウコは、肩に手をかけると

マサルはそのまま後ろに倒れ込んだ

「いやっ」

その顔は

鼻の穴、耳の穴、目、口が

タピオカで満たされている

そして

あとからあとから

たえず、あふれかえるのだった

 

 

 

「なにこれ」

飲みかけのタピオカミルクティー

最後のひとくち分飲んだ

 

スマートフォンから

目をはなし

立ち上がろうとすると

なにか踏んで少しすべる

 

タピオカをふんだのだ

 

顔を上げて外を眺めると

もう

ひざしたのあたりまで

街がタピオカに

うめつくされていた

 

 

きょうは誕生日

「そんな事できるわけねえだろっ」

 

僕は握りしめたナイフを

手首に押し当てた

 

白い壁に血しぶきが

の予定

 

そんなに、出ない血

なにしろ痛い

痛すぎてひざをつく

 

結局、いつもそうだ

あの時も、その時も

なんか血をみていると

せっかく買ってもらった

ロボットのおもちゃを

家の前ですっころんで

ひざがべろっとむけて

ずっと痛いまま箱あけて遊んだ

っていう思い出が出る

 

そしたら

ぶっと

いきなり血ががふきだして

自分の顔にかかった

ああ、これだこれだ

そう思った時には遅かった

ひざがたたない

あと、恐怖なのか

おしっこも出た

 

母は泣いた

僕も泣いた

きょうは、僕の誕生日

いままでで、最高の誕生日