きようなできごと

記憶力が足りない

ブログ買います

「ブログを、買わせていただきたいのです」

男は、そう言った

「はあ」

私は、困惑した

 

突然、訪ねてきた男は

私が、書いているブログを買いたい

という事だった

 

「それにしたって、自分で言うのもなんですが

あまりにも、内容のないというか、なんというか」

自分で、書き残していてあれだが

大した内容のないのが、ブログの特徴だったのだ

 

「申し訳ありませんが

私は、あくまで買い取りにまわっているだけで

その、選定のほうは、うちのブログ長のほうが

やっておりまして」

 

男が言うには

特別な基準を設けて、様々なブログを買っている

みんな、それなりに売っている

という事だった

 

「私のブログも、買いたいと?」

「これぐらいで、お願いしたく」

男の差し出した書類には

私が思う、売れるなら、これくらい

というよりも、2倍の値段だった

 

「ただいま、キャンペーン中でして」

さらに、数割は、値段があがった

 

「それでは、失礼します」

私は、玄関で男を見送った

時計を確認する

「あれ、もうこんな時間?」

午後から、でかけるはずだったけど

午前中は、あっという間にすぎてしまった

急いで、支度をして外に出た

 

彼女は、ブログを売ってしまった

彼女が、ブログを書いていた記憶も

データも、そして

ブログを売った記憶さえも、買い取られた

買い取られたブログの行方は

誰にもわからない

 

外見より内面、とはいえども

やっぱりさ

いきなり、社長の所に行って

「僕、優秀だよ、欲しいよね?」

とは、行かないわけじゃない

 

まず、問い合わせて

書類送って

面接、何回かやって

それで、社長と面接するでしょう

そこで、ようやく

「あなたは、どういう人なんですか」

って所に、来るわけだ

 

逆にさ

社長だとして

なんか、きっと優秀そうな人をみつけて

「君に、決めた」

つって、採用通知を渡したらさ

「いやいや、あなたの会社受けてませんし」

ってなる

 

そこで

壁の落書きは、終わっていた

それにしても、紙がなくて

誰も来なくて、携帯も電池切れで

身動きが取れない

 

直面した問題

あー、なー

こう、こんなに暑いってえと

からだが、溶け出してしまうのも

時間の問題なわけだなあ

おい、ちょっと

そこのホームセンター八海耕作に行って

扇風機を、買ってきてくれ

1600円、いや、1400円のやつをだよ

ばかな事言うんじゃないって?

もう、扇風機はあるって?

そうだよ、あるよ

だから、この扇風機は

朝も、昼も、夜もつけっぱなしだろう

今度は、こいつ自体が熱くなってくる

それを、冷やすための扇風機が

必要ってわけだよ

だから、買ってきて

 

待てよ

そうなると

扇風機を、冷やす扇風機を、冷やす扇風機が

必要になるか

どうしようかな

もうひとつ、頼めばよかったか

まあ、いいか

 

待てよ

そうなると、その冷やしている扇風機を

冷やす扇風機が、必要になるか

ああ、どうしたものかな

 

その時、扇風機が止まった

すべての、送電は停止されたのだ

ぼくたちが、直面していた問題は

もっと、大きいものだったんだ

 

景気がいい兆候

昨日、行ったんだよ

前に言ってた

「ヘビー仏像祭り」

そう、とてつもない重量の仏像が集まる

っていうからさ

やっぱ、行かないわけにはいかないじゃない?

そいでさ

偏屈線の各駅に乗ってたわけ

座れると、思ったら混んでてさ

各駅の意味ないの

そんでさ

窓の外見るじゃん、つり革につかまってさ

その、つり革三角なの

あれ、すごくね?すごくないか

そんで

その、つり革さ、広告入ってんの知ってる?

この、上辺ていうのかな、ななめの所さ

つり革は、もういいか

で、窓の外見てて、たら

駐車場みたいなところでさ

でっかいショートケーキがさ

置いてあってさ

いや、でかいよ

幅が、軽いバスくらいあるよ

ああ、切れてるやつじゃないよ、ホールよ?

だから、直径がバスくらい

あ、っと思って見たんだけど一瞬でさ

あれ、一体なんなんだろうな?

 

そう、言って若い男性二人は

電車を降りた

でっかいショートケーキて、なんだよ

まじかよ

この駅で、降りれば情報が得られるのか

そんなわけないか

まあ、いいや

きょう、私は、巨大モンブランの日なのだから

 

海岸通りで

僕が、小学校だった時

ある生徒の誘拐騒ぎがおきた

騒ぎというのも

実際は、誘拐されたわけではなく

ただ、帰りが遅くなっただけだった

はずなのだが

その生徒、仮にAさんは

クラスで、目立つタイプではなかったが

僕は、少しは話をする程度の、関係だった

ただ、その騒ぎの翌日から

以前とは、違う雰囲気になり

話をする事もなくなっていた

そして、その理由を直接聞く事も

できないままでいた

中学校は、同じ学校で

高校から、お互い違う学校へ通ったため

それきり、会う事もなかったが

そのAさんを

乗り換えのために、降りたこの駅の

向かいのホームで、見かけた気がしたのだ

乗り換えるホームと、次の電車の時間を

調べていると、視線を感じたのだ

顔をあげて、しっかり見ると

そこには、もう誰もいなかった

遠目ではあったが、あれは確かにAさんだった

駅の構内を探そうとも思ったが

きょうは、この駅の沿線でイベントが行われており

いつもよりも、混んでいたので、あきらめた

そうしていたら

僕が乗ろうとしていた電車が

この先で起きた事故で、しばらく発車できないとの事だった

一瞬、きょうはあきらめようかとも思ったが

別の線を使って、向かう事にした

こちらの電車を使えば

時間はかかるものの、たどり着けるはず

だったのだが

先の事故は、周辺沿線にも影響を与え

復旧の見込みがたたないまま

乗り換えたこちらの電車も

途中の駅で、停車し待機する事になった

僕は、とうとうあきらめて電車を降りて

駅を出た

すると、そこは

昔、海水浴に来た事が所だった

懐かしさもあり、海岸へ向かって歩き出した

子どもの頃は

とても大きな海岸という印象があったが

いま見てみると、そこまで大きくなかった

だけど、きれいな砂浜だった

渇いた風が、僕の横を通り過ぎた

海岸を、大きな犬をつれて歩いている人がいた

いいなあ、犬飼いたいなあ

ひとつ、息をはいた

いや、絶対に、犬を飼う

僕は、こころにそう決めた

 

アンテナ引きちぎる蝶

そのどでかい蝶は

人を襲いはしないが

家のテレビのアンテナを引きちぎる

だから、俺は

薬局で、買っておいた

害虫駆除用の、蝶用の

スナイパーライフルを取り出してかまえた

それをみたおやじは、こう言う

「おい、安全装置はずれてないぞ」と

害虫駆除用のこれに

そんなものは、ついてないさ

再び、俺はかまえるが

蝶は、となりの家の

山下さん家のアンテナを

引きちぎっていたんだ

俺は叫んだ

「山下さーん、アンテナ、蝶にやられてるよ」

そしたら、山下さん

「ちょっと、あんたのとこも、やられてる」

俺は、あわてて外へ飛び出した

うちにも、でっかい蝶がいたものだ

俺は、スナイパーライフルをかまえる

すると、おやじはこう言った

「おい、安全装置」

俺は、おやじに銃口を向ける

すると、おやじの

背中が、割れて

でっかい蝶が

おやじが蝶なら、俺は

ルラララ ルラララ

 

「これが、歌詞?」

ディレクターは、僕が書いたメモを突き返してきた

「はい、全然できなったんですけど

さっき、突然わいてきて

あの、すいません、字きたなかったですよね」

「字とかじゃねえし、内容だし」

ディレクターは、席を立った

僕は、指で拳銃のかたちをつくり

立ち去るディレクターの、背中めがけて

バーンと撃つ真似をした

 

すると、ディレクターの背中がわれて

でっかい蝶が

 

物騒な世の中

彼女が部屋に来て

手料理なんて、つくってくれるてんで

俺は、それを

ビールで、迎え撃とうと決めていた

と思っていたら

その、ビールがない

というわけで、コンビニにビールを買いに出た

 

その帰り道

俺の携帯は、震えだした

メールが来たのだ

彼女からかと思って開くと

見知らぬアドレスからで

「私は、あなたのストーカーをやっている者です」

とんでもない、書き出し

「私は、今あなたの部屋のタンスに入っていて

彼女さんが、電話する内容が聞こえた」

とんでもない、状況

「彼女さんは、料理に睡眠薬を混ぜて

あなたを、眠らせ、待機している仲間が

あなたをさらっていき、始末する手はずだそうです」

とんでもない、内容なメールとともに

タンスの中から、部屋の様子をとった写真が

添付されていた

確かに、俺の部屋だ

「だから、今日は、部屋に戻らないでください」

 

本当に、物騒な世の中だ

そのメールを、さっきコンビニで出会った女の子に

みせると

「わー、マジ物騒」

だってさ

ところで、きょう、泊めてくれない?

 

みんな同じで

「すいません、ちょっといいですか?」

「なんですか」

「ほら、あそこ歩いている人見てください」

「どこですか?」

「ほら、そこの前の所」

「ああ、あの背の高い女性ですか?」

「そうです、あれ最新のロボットみたいですよ」

「ああ」

「あれ、驚かないんですか」

「はい、私もロボットなもので」

「ああ、これはすいません、あの」

「はい?」

「私も、ロボットなんですけどね」

「ああ」