きようなできごと

記憶力が足りない

友好のあかし

「それでは、これを」

話の終わりに、ある星の大使は

箱を取り出した

 

その箱の中には、からだの丸い四足の生物が

 

「我々と、この星、地球との友好のあかしと」

うすみどり色で、透き通ったからだのそれは

しっぽをふって愛嬌をふりまく

 

大使は言う

「くれぐれも、人間が飼ってください

それと、数が増えることもあるでしょう

とにかく、人間が飼ってください」

 

それがきっかけで起こった

「うすみどり色のそれ」ブームは

飼っているうち、数を増やし

世界中にどんどん、広がった

 

時々、からだに模様があったり

いろが違う個体が、確認された

それらは、不当が金額で売買がされ問題になった

 

だが

それも、わずかで

とにかく、増えるスピードが速く

欲しい人には、すべていきわたった

 

そうなってくると

捨て「みどりのそれ」が、増えて社会問題に

 

野生に戻った「それ」は

からだが、人に飼われている頃の、数倍に大きくなり

性格も獰猛になり、街の建物や、人に被害が出る事が多くなった

 

やがて、あの大使が

再び、地球に訪れた

 

 「どうやら、たいへんな事に」

大使の星にも、地球の状況は知らされていた

 

「なぜ、野生にはなってしまったのですか」

大使は、少し怒っていた

 

「ですが、過ぎた事はしかたありません

これからについて、考えましょう」

大使は、おだやかに笑いそう言った

 

「我々と交流のある星でも、地球と同じ事態にあった星がありました」

大使は、カタログを取り出す

 

「このような装置を、街に置いていただければ」

レーザーを使ったワナ、のようなものだった

「これで、絶滅とはいかないが、平和はおとずれるでしょう」

地球は、その装置を仕入れる決定をした

 

「それでは、これを」

大使は、ちいさな箱を取り出す

 

箱の中には、液体のみたされた細長い箱が

その中には、四足の細長い生物が

「これは、増えないし、暴れませんよ、友好のあかしですから」

 

増える理由

それは、確かにコンビニだった

いや、コンビニに見えた

「ああ、すげえ」

近づこうとする隊員の肩をつかみ

「待て、とりあえず調査しよう」

 

我々の船が

不時着したこの星は

ほとんどの大地が、砂漠で

ずっと、強い風が地表を撫ぜていた

隊長の私と、隊員Aと隊員Bが調査に出た

ひとつの砂山が、やけに明るく

そこには、コンビニがあった

 

それの外観は、完全にコンビニだった

道路に面した、ふつうサイズの平屋のコンビニだった

なぜだか、車の駐車スペースまであった

店内と、近くに立つ大きなかんばんから

煌々とまぶしい明かりが、砂漠を照らしていた

 

店内は

ちゃんと商品が並んでいた

先ほどまで、人がいて管理していたかのように

飲み物は、棚で冷やされ

レジ横には、おでんまであった

 

これは、まぼろしか

発見した時、真っ先に思った

長い宇宙船での旅、味気ない宇宙食

我々は、限界にきていた

そんな、我々がみているまぼろしなんじゃないか

 

「いやー、うめえなあ」

奥のほうを調査していた隊員Aが言った

彼は、棚から飲み物を取り出し、飲んでいた

「おい、大丈夫か?」

「全然、大丈夫ですよ、隊長もどうですか?」

 もらった飲み物のボトルを眺める

いたって、普通のものだった

 

「あ、ああっ」

先ほど、飲み物をくれた隊員Aが

飲み物の棚の中に、手を突っ込んでいる

「どうした?」

「なんか、奥のやつ取ろうとしたら

どんどん手が飲み込まれて」

からだごと引っ張ってみたが、まったく動かない

この冷蔵庫の中に、なにかいるのか

うしろから回ろうと、中へ入るドアを探した

 

ドアがない

あるのは、トイレのドアだけだ

この冷蔵庫には、入れない

では、中にはなにが

その間、隊員のからだはどんどん、棚のすきまに

飲み込まれていった

 

「おい、Bこっちに来てくれ」

私は、隊員Bを呼んだ

さっきから、Bはひとことも発していない

レジのほうへ回ると

隊員Bは、弁当の棚に飲み込まれているところだった

もう、足首しかない

 

ゆっくりと、床がゆれたような気がした

 

 

 

地表の調査に行った部隊が

「コンビニを発見」という

通信とともに、行方がわからなくなった

 

通信が途絶えた箇所に

確かに、小型の店はあった

しかし、報告によればひとつだったが

あわせて、4つ店は並んでいた

 

戦争と平和の

彼女と出会ったのは、オンラインゲームだった

だいたいパーティを組んで遊ぶ、そのゲームで

はじめたばかりだった僕は

ものすごい勢いで、ひとりで戦っていた彼女の

うしろで、勝手に戦っていたら

彼女のほうから、話しかけてきたのだった

 

僕らはすぐに意気投合して

一緒にパーティを組み、ゲーム外で

テレビチャットもするようになっていた

 

彼女は、とてもかわいらしかったが

からだに、コンプレックスがあるという話になった

そりゃあ、生まれた星が違うのだから

僕達とは、少し違うところがあるかもしれないが

そんなのは関係ない

そう言うと、彼女は安心した様子で

僕と会いたい、と言ってくれた

そして、彼女は地球に観光に来る事になったのだ

 

僕は

宇宙船の空港に、彼女を迎えに行ったんだけど

空港の人に聞くと

その時間、一般の船は、全て運行停止なのだそうだ

なんでも、特別な輸送船が来るらしい

空港内は、厳重な警戒がされていた

と、いう事は

彼女も運行停止にあって

この後の便で、来るんだろう

僕は彼女に渡そうと思っている花束を

まじまじと眺め、時間を過ごした

 

 

 

きょうが

まさか、こんな日になるなんて

この宇宙空港の全てを、取り仕切るこの老いぼれにも

 

空港の長である、吉田は朝から落ち着きがない

そして、続ける

 

あれは、私がまだ幼少の頃でした

永遠に続くと思われた、太陽系での戦争の末期です

最後の砦、地球もほとんどの地域が制圧

もうだめか、と思われたその時

ひとりきりで、地球を救い

その戦争を、勝利に導いた女性がいたそうです

それは、太陽系外からの使者

その姿は

私は見た事は、ありませんが

伝え聞くに

巨大な立方体の鉄に似た素材のかたまり

その側面の中心には

人間の顔に似た器官があり

地球の言語も話した、という事です

そして、その顔は絶世の美女

 

ほうら

やってきましたよ

彼女を乗せた、輸送船が

それにしても、なぜこの時期に

80億の星を治める彼女が、なぜいま地球に

そんなのは関係ない

いまは、光の女神と

そして、いまこの地球が存在する平和について

ただ、身を委ねよう

 

吉田は、緊張の汗、あるいは、脂汗を拭い

出迎えにむかった

超大型の輸送船の、到着は間もなくだった

 

地球にいい

彼らは一体どういう存在なのか

僕達は、とまどった

 

薄緑色をした球体のそれは

いつの間にか、地球にいた

特に危害を加えてくる事はなかった

 

そして

なにげなく、誰かが

そいつに、手を当てた

すると、そいつは紙を吐き出した

それは、手を当てた人の

頭の中のイメージを、漫画にしたものだった

 

最初のそいつは

たいへん貴重な存在となったが

すぐに、いつの間にかあいつらは増える

やがて、世界中に広まった

 

なにしろ

イメージをことばで伝えるのには限界がある

 

しばらくすると

少し色の違う、そしてできる事の違うあいつらが

少しずつ、増えていった

 

僕は時々思う

こいつらは、一体なにをしにきたのだろうか、と

いろいろな事を、人間のかわりにやってくれる

だんだん、人間がやらなければならない事は減っている

全て、彼らがやってくれるからだ

 

あたらしい侵略なのではないか

武力での制圧ではなく、ゆるやかな共生

以前よりも、地球の緑が増えたと聞いた

地球にとっては、よい事だろうか

 

僕の不安な気持ちを

足元の、薄緑色のやつが

勝手に印刷しはじめて

床は、なんか暗い漫画で埋め尽くされた

 

やがて

気持ちが落ち着く空気を吐き出すやつが

大きく息を吐いた

僕達は、やつの空気につつまれると

だいたいは、寝てしまう

これが、とてもいい睡眠できる効果があった

 

薄れ行く意識のなかで

彼らが、なにやら光りだしたような気がしたが

僕は、眠りに落ちた

 

深刻で、シビアな事象の消し方

でもな

あの「ホンワカパッパ」な、のりで

たのしい雰囲気が、あふれているんだけども

よくよく、考えてみると

深刻で、シビアな話かも知れないと思って

 

というのも

あの、少年のところに

あの、ロボットが来た

それは、少年といつも一緒にいる

同級生の少女と、少年が結ばれる

ために、来たわけだ

あの、大柄な少年の妹と、ではなく

 

となると

たとえば、メガネの少年が

どうしようもない、困難が降りかかろうとする時

やはり、ロボットは道具なり

タイムマシンをつかって、どうにかするのだろうか

 

ここまで書いた時

部屋に、少年と青いだるまのようなものが

突然、現れた

彼らは、光線銃的なものを、こちらに向け

様子をうかがっている

 

「あの」

僕が、話しかけると

少年は、トリガーに指をかけた

「待ってください、なんなんですか?」

僕は、両手をあげ、抵抗する意思のない事をしめした

 

すると

となりの青いだるまが

「そのパソコンで書いている、ブログの記事を消せ」

と、言ってきた

 

ところで

この、青いだるまはなんなんのだろうか

金属だろうか、それなりの重量がありそうだが

足元を見ると、畳がへこんでいない

それどころか、少しだけ浮いているようにみえる

右手は、少年と同じく、光線銃的なやつを握っている

いや、原理はわからないが、丸い球状の手に、ただついていた

陶器でできたたぬき、あれに似ていたが、全体が青かった

 

「消したか?」

青いたぬきは、僕の訝しげな視線に

いらだっているようだった

僕は、パソコンの画面をみせながら

ブログの記事を、削除した

 

青いたぬきは、それを確認しうなづくと

少年が、青いたぬきになにか耳打ちをする

そして、少年は、僕にむかって引き金を引いた

 

僕は、強烈な眠気を感じながら

青いたぬきが、何か言っているのを聞いた

「この銃で、撃たれたものの記憶は、消去される」

僕は、意識を失った

 

 

 

僕は、眠ってしまっていた

ここ最近の、寝不足がたたったのか

それにしたって

きょうは、ブログに残しておきたい文章がある

あの、未来から来たネコ型ロボットの漫画についてだ

 

◯◯断ちツアー

世間では、空前の◯◯ブーム

あたらしい◯◯は、次々に発売され売り切れ続出

現在では、◯◯をやりすぎてしまう

◯◯依存症が、社会問題化

そして、ついに

◯◯断ちのツアーが、催されたのだった

 

◯◯断ちツアーは

◯◯に依存しがちな、小学生十数名が

誰も住んでいない南の島で、二泊三日を過ごし

◯◯に依存した生活の改善、さらには

自然とたわむれ、思い出もつくちゃおう

そういうツアーです

 

島の近くの港から、船で出発です

出発ギリギリまで

◯◯をやりつづける、こどもたち

先行きが不安ですが

きっと、帰ってきた時には

 

順調に進むかと思われた、◯◯断ちツアー

二日目に、

なんと、数名のこどもたちが

隠れて、◯◯をやっていたというのです

手荷物の中には、◯◯はなかったはずなのに

なんと、付き添いで来ていた大人から

分けてもらったというのです

 

隠し持っていた◯◯を

全て出させていた、その時

 

空から、とても大きな◯◯が降ってきました

それは、地表に近づくと

ちいさな◯◯に、わかれて

◯◯断ちツアーの、こどもたちと

付き添いの大人たち、全員の手にわたりました

 

こどもの手前、がまんしていた大人も

二日目にして、禁断症状が出ていたこどもたちも

◯◯を楽しみました

 

今回は、失敗してしまいましたが

次回は、砂漠のまんなかとかで

◯◯断ちを、やってみたいです

 

「おい」

編集さんは、勢いよく原稿を投げてよこした

「なんだこりゃ、作文みてえな終わり方しやがって」

そう言うと、編集さんは

ポケットの、◯◯に手を伸ばし

夢中で、触り始めた

 

僕は、やれやれと

喫茶店の窓から、外を見た

空から、細かくなった◯◯が、降ってくるタイミングだった

 

的確な指摘

「もういいから、どこにでもいけ」

そう言うと、彼はドアを強く閉めた

僕は、呆然とする

僕は、僕がつくったロボットに家を追い出されたのだ

 

そう、自分の中で思ってみても

どうにも、理解ができなかった

確かに、彼は合理的だった

だいたいの、僕のうっかりは

彼からしてみれば、非合理的でしかなかったのだ

「なぜ、そんな事もできない」

よく、言われたものだった

失敗する事だって、あるだろう

それにしたって、おそろしく高性能なロボットだ

誰が、つくったんだろうか

まあ、僕なのだが

とりあえず、今夜過ごせる場所を探そうと思う

 

ボクは、すぐに電話する

「ボクだよ、ああ、今、家を追い出した所だ

そちらを、訪ねていくかも知れないから連絡した

廃棄局には、もう連絡したから、すぐ来てくれるはずだ」

ボクは、一緒に生活していたロボットを

家から、追い出した

 

なぜだか、奴はボクの事を

自分でつくったロボット、と思い込んでいて

いくら、お前はボクが購入したロボットだ、と言っても

冷笑とともに、流されるだけだった

 

購入した当初は

最新のモデルで、高性能だったが

次第に、頼んだ作業が、雑になりだした

どうも、少し楽をする事を、学んだようだ

掃除を頼むと、拭き残しがある

指摘すると、「そこは、先週拭いた」とか

「いま、やろうと思っていた」など

買い物を頼むと、必要な物は買い忘れて

必要のない自分が欲しい物は、しっかりと買ってくる

 

メンテナンスセンターに行くよう

言っても、素直には行かない

先週は、自分から行くと言ったのに

ずっと、公園で過ごしていたようだ

 

「だから、君のほうも気をつけたほうがいいよ」

玄関のチャイムが鳴る

「こちらは、廃棄局の者ですが」

インターフォンから、声が聞こえた

「ロボット、片付いたみたいだから、電話切るよ」

 

ボクは、玄関に向かうのだが

さっき聞いた、廃棄局の人の声

なんだか、聞いた事があるような気が

ボクは、ゆっくりとドアを開けた

 

アプリでゲット

その公園は

僕が、最初にレアなモンスターをつかまえた場所で

どうやら、うわさがひろまったみたいで

もう、夕方なのに

多くの人が、モンスターをつかまえていた

 

僕は

このあたりのモンスターは

根こそぎつかまえちゃったんだけど

なんとなく、この公園に来てしまうんだよな

なにげなく

スマートフォンを、取り出しアプリを立ち上げた

すると

「あの」

僕と同じように、スマートフォンを手にした女性が

話しかけてきた

あのアプリは

僕に、貴重なモンスターだけでなく

とんでもない、奇跡のような出会いまでもたらしたんだ

 

彼女との

結婚を意識しはじめた頃

彼女から、別れを切りだされた

彼女のお母さんが、思い病気にかかっている事

迷惑はかけられないから、別れたいという事

お母さんの手術には、大金がかかるそうだ

 

「俺、その金出すよ」

金額を聞いたら、全然、僕の貯金では足らなかった

でも、少しでも足しにして欲しい

そして、返すのはいつでもいい、という事を告げた

 

あれから、3年がたった

彼女と連絡がとれなくなって3年

結局、彼女のお母さんは助かったのだろうか

一度も、お見舞いに行けなかった

ずっと、断られていたのだ

それからも、彼女を事を探し続けている

もう何度目か、あの公園にも来てみた

あの奇跡のような出会いが、再開が

また、起こるんじゃないか

そう、思ってまた、今日も来てみたのだ

 

「ねえ、このアプリ見てよ」

「あ、これ知ってるよ、モンスターのやつでしょ」

「違う、違う、まあ、似てるけどね」

そのアプリは

人間のあらゆる情報を、検索できるものだった

職業から年収、趣味から性的志向から

「え、なんなのこれ、どこからこんなの」

「まあ、いいじゃん、あなたもつかってみる?」

その時

アプリに、「ターゲット発見」の文字が

「あ、やっと来た!きっと、あの人だ」

むこうから、男性が歩いてきた

アプリ上で、見るとお金のマークが光り輝いていた

「わたし、あの人ゲットしてくるから、ごめんね」