きようなできごと

記憶力が足りない

羊毛をつんだ家、あるいは

そのダンジョンを出ると、夜は明けていた
あたりを、よく確認して
(クリーパーなどには注意して)
その海辺のダンジョンを、後にした

僕は、疲れていたのだ
大量の石炭を、抱えながら
これは、自分の責任でもあった
何も、幸運Ⅲのつるはしで、掘る事はなかったのだ

確かに、僕は疲れきっていたはずだが
いつのまにか、走りだしていた
一刻も早く、あの冷たいシーツを有した
あの硬いベッドに、潜り込みたいのだ
まあ、昼間だから、眠る事はできないのだが

家につくと
荷物を整理したら
(石炭は、もちろんブロック化済だ)
もう、やる事はなくなってしまった
先週の週刊誌は
もう、本当に穴があくほど、読んでしまっていた

空腹をおぼえたが、パンがなかった
小麦を取りに、畑へ出向く事にした

常に考えているのは
小麦を、どう収穫すれば、効率的なのか
という事をだ
まあ、それを考えているうちに
小麦の刈り取りと、種の植え付けは
すんでしまうのだったが

ふいに、考えが浮かぶ
小麦のまわりに、置いてあるたいまつを
ジャック・オ・ランタンに、変えるべきではないか、と
ただ、僕には、カボチャの持ち合わせがなかった
やれやれと、僕はカボチャを取りに行く

カボチャは、思いのほか良くとれた
手早く、たいまつを組み合わせて
ジャック・オ・ランタンに、仕上げると
設置の作業に、入った

僕が、ジャック・オ・ランタンを設置する時
顔を、南向きにする事に決めていた
それは、このカボチャが育つ際
顔が、南向きになるからだった
それは、ほんのささやかな事ではあったが
これに、背く事はできない、と思っていた

この作業が
どれだけ、作物の育成に役立つのかは
僕には、わからなかった

あたりが、暗くなってきたので
家に帰った
結局、小麦を取りにいったはずが
ジャック・オ・ランタンの設置に、時間を費やしてしまった
僕の胃袋は、限界を迎えていた

チェストの底に、残っていたりんごをかじり
冷たいベッドの、冷たいにシーツに潜り込んだ

眠りに落ちる寸前
「明日は、砂からガラスをつくろう」
そう、思った
 

その冷蔵庫、160km/h

男は、ひどく急いでいる風に、こう続けた

「ここらへんで、冷蔵庫見なかったか?」と

 

オンラインに接続した冷蔵庫は

なかの食べ物から、適したレシピを紹介する

だけの、はずだった

 

いつしか

自走装置をつけ、人間に反逆するようになった

 

そこにあらわれた

冷蔵庫を巧みに乗りこなす、謎のライダー

 

13あった拠点も

ついに、12番目まで、冷蔵庫によって制圧

残された人類に、冷蔵庫を止める術は

 

ただ、食べ物を冷やすという冷遇を受けた、冷蔵庫と

人間たちの戦いが、いま、はじまる

 

「それゆけ!冷蔵庫ライダー ~電源はどこかくるの?~」

 

公開未定

 

地球防衛のかなめ

僕は、常々感じていた疑問を

ついに、ハデ丸にぶつける事にしたんだ

 

ハデ丸っていうのは

正式名称は、よく知らないんだけど

前にいた人が、勝手につけた名前が

みんな使うようになって、オフィシャルってのに

なったって話を聞いた

 

なにを聞いたかって言うと

つまり、僕がやっているこれ

この作業は、なにかに役に立っているのか?

という事をだ

 

ハデ丸は

僕の作業のアシスタントを務めるロボットなんだけど

本当のところ、僕は「監視役」なんじゃないか

と思っている

 

ハデ丸は答えた

「それについては、以前からお答えしているように」

ここで、だいたいなぜだかハデ丸は、一息つく

ロボットのくせに

「充分に役に立っている、とお答えしてきました」

いつもの回答だ、よくできました

「先日、具体的にどのような事を行っているか

話してもいい、と政府から通達が来まして」

「えっ」

いつものとは、異なる回答に

質問したのは、僕だけれど、本当に驚いた

「結果から言ってしまえば、あなたは、この星が

直面している危機を回避するために、役立っています」

僕は、なにかとんでもないところに

とんでもない穴に、手を自分からつっこんでしまった

そんな感じがした

 

現在のこの星

いたって、平静をたもっている

ように、見えているが

実際は、毎日、他の星からの襲撃など

様々な、脅威にさらされている

それを、回避するために

多くの人員がさかれてはいるが

ほとんどの人々は、それを知らされずに

おだやかに、暮らしている

が、あなたが

学校から、帰ってきた後

ここで行う作業も

人類を救うために、必要な事なのだ

 

(おじいちゃんが、言うには

かつて、「学習塾」というものがあって

それに似ているらしい)

 

実際

ここで、行われているのは

光るボタンを、タイミングよく押す、や

様々な大きさの四角を、大きい順に並べる、や

あなたのような、学生でも

かんたんに、操作できるよう、簡略化されているが

その先で、わたしのようなロボットが

反抗勢力に対して、攻撃、防御を行っている

 

そして

この作業への適性は、あなたが

この国、いや、この星で一番適正がある

 

なので

あまり、面白くない作業かも知れないが

適当にやったり、さぼっていただいては困る

そういう、作業になっています

 

すらすらと、そこまでしゃべったハデ丸は

少し、疲れた様子だった、ロボットなのに

 

僕は、しばらく考えて

「わかったよ、じゃあ、きょうの分やるよ」

 

きょうの分の作業が、終わり

僕は、センターを出る

そこで、僕は考える

ハデ丸が、言った事はどこまで本当なんだろうか

僕が、こどもなのをいい事に

適当な事をいってやしないか

ただ

僕には、それが本当なのかうそなのか

確かめるすべが、いまのところない

 

夜空を見上げたって

流れ星とやらすら、ありはしない

それでも、あれがなにかに役に立っているならば

それでいいか

 

 

 

死神と生徒

おい、これ

見たけどさ

なんだよ、これ

俺はさ

死神っていったんだぞ、し・に・が・み

カマ持って、フードみたいのかぶって、て

やっぱり、こういう所だよな

常日頃、イメージの感覚みたいもん

あわせておいたほうが、いいって話さ

 

これ、なんだよ

カマじゃなくてさ、お釜じゃん、米炊くさ

それで、なんでラッパーみたくさ

ラッパーのラジカセみたくさ

肩にのせてんのこれ

これから、手巻き寿司パーティーでもすんのか?これ

 

あとさ

フードっつったじゃん

これ、完全にパーカーじゃん

あとさ、ひもぎゅうぎゅうにしめちゃって

これさ、ミツアキだろ

YouTubeの瀬戸弘司の

だって、パーカーオレンジじゃん

 

これさ、完全にさ

渋谷で、紅白の出場者に

炊きたての福井の米を届けるミツアキ

って、ことじゃん

笑ってんじゃねえよ

 

やりなおしな

この前の、飲み会でいってた

天下とるとらないの話

いつまでたっても、実現できませんぞ

このままではな

 

完全に

ミツアキTVに、寄ってしまったのは

直前に、瀬戸弘司さんの動画を見たからですけどね

あなたの、その目つきのほうが

まさに、死神

 

ああ、やりなおしか、ジャスティス

 

on got 8 sea

ドアを開けると

知らない女が、立っていた

そして

「あの時の、◯◯です」

と、言う

 

ひとつ、息を飲み

静かに、ドアを閉め

ゆっくりと、鍵をした

 

そして、俺は玄関に崩れ落ちる

ああ、ゆっくりと、世界がニジム

 

友好のあかし

「それでは、これを」

話の終わりに、ある星の大使は

箱を取り出した

 

その箱の中には、からだの丸い四足の生物が

 

「我々と、この星、地球との友好のあかしと」

うすみどり色で、透き通ったからだのそれは

しっぽをふって愛嬌をふりまく

 

大使は言う

「くれぐれも、人間が飼ってください

それと、数が増えることもあるでしょう

とにかく、人間が飼ってください」

 

それがきっかけで起こった

「うすみどり色のそれ」ブームは

飼っているうち、数を増やし

世界中にどんどん、広がった

 

時々、からだに模様があったり

いろが違う個体が、確認された

それらは、不当が金額で売買がされ問題になった

 

だが

それも、わずかで

とにかく、増えるスピードが速く

欲しい人には、すべていきわたった

 

そうなってくると

捨て「みどりのそれ」が、増えて社会問題に

 

野生に戻った「それ」は

からだが、人に飼われている頃の、数倍に大きくなり

性格も獰猛になり、街の建物や、人に被害が出る事が多くなった

 

やがて、あの大使が

再び、地球に訪れた

 

 「どうやら、たいへんな事に」

大使の星にも、地球の状況は知らされていた

 

「なぜ、野生にはなってしまったのですか」

大使は、少し怒っていた

 

「ですが、過ぎた事はしかたありません

これからについて、考えましょう」

大使は、おだやかに笑いそう言った

 

「我々と交流のある星でも、地球と同じ事態にあった星がありました」

大使は、カタログを取り出す

 

「このような装置を、街に置いていただければ」

レーザーを使ったワナ、のようなものだった

「これで、絶滅とはいかないが、平和はおとずれるでしょう」

地球は、その装置を仕入れる決定をした

 

「それでは、これを」

大使は、ちいさな箱を取り出す

 

箱の中には、液体のみたされた細長い箱が

その中には、四足の細長い生物が

「これは、増えないし、暴れませんよ、友好のあかしですから」

 

増える理由

それは、確かにコンビニだった

いや、コンビニに見えた

「ああ、すげえ」

近づこうとする隊員の肩をつかみ

「待て、とりあえず調査しよう」

 

我々の船が

不時着したこの星は

ほとんどの大地が、砂漠で

ずっと、強い風が地表を撫ぜていた

隊長の私と、隊員Aと隊員Bが調査に出た

ひとつの砂山が、やけに明るく

そこには、コンビニがあった

 

それの外観は、完全にコンビニだった

道路に面した、ふつうサイズの平屋のコンビニだった

なぜだか、車の駐車スペースまであった

店内と、近くに立つ大きなかんばんから

煌々とまぶしい明かりが、砂漠を照らしていた

 

店内は

ちゃんと商品が並んでいた

先ほどまで、人がいて管理していたかのように

飲み物は、棚で冷やされ

レジ横には、おでんまであった

 

これは、まぼろしか

発見した時、真っ先に思った

長い宇宙船での旅、味気ない宇宙食

我々は、限界にきていた

そんな、我々がみているまぼろしなんじゃないか

 

「いやー、うめえなあ」

奥のほうを調査していた隊員Aが言った

彼は、棚から飲み物を取り出し、飲んでいた

「おい、大丈夫か?」

「全然、大丈夫ですよ、隊長もどうですか?」

 もらった飲み物のボトルを眺める

いたって、普通のものだった

 

「あ、ああっ」

先ほど、飲み物をくれた隊員Aが

飲み物の棚の中に、手を突っ込んでいる

「どうした?」

「なんか、奥のやつ取ろうとしたら

どんどん手が飲み込まれて」

からだごと引っ張ってみたが、まったく動かない

この冷蔵庫の中に、なにかいるのか

うしろから回ろうと、中へ入るドアを探した

 

ドアがない

あるのは、トイレのドアだけだ

この冷蔵庫には、入れない

では、中にはなにが

その間、隊員のからだはどんどん、棚のすきまに

飲み込まれていった

 

「おい、Bこっちに来てくれ」

私は、隊員Bを呼んだ

さっきから、Bはひとことも発していない

レジのほうへ回ると

隊員Bは、弁当の棚に飲み込まれているところだった

もう、足首しかない

 

ゆっくりと、床がゆれたような気がした

 

 

 

地表の調査に行った部隊が

「コンビニを発見」という

通信とともに、行方がわからなくなった

 

通信が途絶えた箇所に

確かに、小型の店はあった

しかし、報告によればひとつだったが

あわせて、4つ店は並んでいた