きようなできごと

記憶力が足りない

かなしみのはて

「怒りなんてのは

やがて消えるもんだけど

かなしみは

なんで、こんなに広く

そして深いんだろうな」

 

僕は用意していたこたえを言った

 

「そうか

そうなのかな」

 

彼は少しおおきな石を

かなしみに、投げ入れた

 

波紋は際限なくひろがり

けれど、石が底につく様子はなかった

 

大逆転パイナップルストーリー

なにが

悲しくて

もうやめた会社の

オフィスの恋愛事情を聞かされてくてならないのだ

 

まあ

ごはんをおごってくれる

というので

馳せ参じるざるを得ないわけです

 

でも

それが

なんかハッピーなやつだったら

いくらかは、マシーなんだろうけど

不倫からみだなんて

いうじゃない

 

まあ

お互いのことを知っていて

いまは、あの場所にいない者

となると

そして

飯につられて、ノコノコ出てくる

のは、俺くらいのものだろう

これは言われたわけではないが

ほぼ事実だろうな

 

お昼によくいったファミレスは

あいかわらず、混んでいた

あれ、あの向こうに座ってるの

ハゲさん、いやHさんじゃないか、やばいな

 

きっと

あんまりよくない方向と

思っていた、彼女の話は

めでたく、その人と結婚することになったと

 

なんというか

予想外、想定外の結果に

「ウェエ」

と大きく声が出た

昼のファミレスで、だ

 

まわりの客の視線が痛い

あの向こうの人は、知っているHさんではなかった

その後

「ウェエエエィ」

と、話に盛り上がりテンションもあがった

という演出にした

 

まさかまさかの

大逆転のストーリーか

もはや、ぼんやりしながら

元同僚の彼女と別れた

オフィスのあるビルに戻る彼女の

足取りが、異常に軽やかに見えたのは

気のせいではないだろう

 

そういえば

このビルから見えるところに建った巨大スーパー

前評判はすこぶる良くなかったが

どうやら、調子はいいらしい

奇跡の大逆転は、あるんだなあ

 

夏前の日差しは

思ったよりも、俺を焦がした

 

やっぱり

あのハンバーグに、パイナップルは

いらないと思いますがね

 

 

最後の修理技師

 

彼は、仕事場につくなり

すぐに、作業をはじめます

基本的にひとりでの作業です

 

大きな作業場には

所狭しと、壊れたロボット達が

彼は、数少なくなったロボット修理技師なのです

 

かつて

我々人間は、自分たちの仕事を

ロボットに奪われまいと、抵抗した時期もありました

ただ、実際にロボットが

労働に使用されると

やはり、強い味方になったのでした

 

当初

ロボットが故障した場合

メンテナンスロボットによって

修理がなされていましたが

ロボットにも、人間に修理してもらえる権利があるはず

という主張が認められてからは

多くのロボットは

人間の技術者によって、修理されてきました

 

ただ

その人数も、この数年で激減

後継ぎもいないまま、修理店をたたむ人も多く

現在では社会問題化しています

 

それでも

ロボット達は、人間の手で修理されるのを

待っています

 

今回

取材をして

やはり、人の技術というのは

限られたなかで、とても貴重なもの

というのを感じました

 

そして

この取材後

この技術者のかたは

作業場で倒れているのを発見されました

死因は、過労のようです

 

わたしも、調子が悪かったので

修理してもらいたかったです

 

なお

もう、この星には

修理のできる技術者はおりませんので

修理の場合は、他の星をお探しください

番号は、以下のフリーダイヤルより

 

 

無限の空間と救いの甘露

ちいさい頃に

病院の待合室にいると

「俺、もう一生ここから出られないんじゃないか」

っていう気持ちになった

 

「俺ら、もう奇妙な世界に迷い込んだんじゃないか」

って窓の外から、タモリがのぞきこんでやしないか

 

なんていうか

無限とも言える待ち時間

もう、なにかの手違いで

僕の名前だけが、ないとか

飛ばされちまったんじゃないかって

 

そんな頃に

赤ちゃんが泣いたりすんだよね

いっせいにかたまる、こどもたち

この先で、あの扉のむこうで

一体なにがおこなわれるのか(診察ですよ)

 

この鬱屈とした流れを断ち切るべく

ささやかな提案をするわけ

「ねえ、病院終わったらジュース買っていい?」

そうなんだな

あの甘きしずくのことを思えば

この無限の空間も乗り切れる

 

まあ

そんな僕も大人になって

気がついたら、2時間くらい座ってたね

まあ

具合悪いから、無限の空間どころじゃないのよ

まあ

帰りにジュースは買いましたよ、ええ

 

 

どおりで空がムラサキ

「そろそろ、キミを

元の世界に、かえさなきゃ」

「そうだね、地球でみんな

待ってるよね」

「実は話さなきゃならないことが」

「え、何」

「ここも、地球なんだ未来の」

「なんだって!!!」

 

未来の地球では

環境破壊がすすみ

いろいろあって

ピンク色の大地になってしまった

んだって

「僕、残るよ

それで環境破壊の原因を

みんなで解明するよ!」

 

なぞの悪の組織到着まで、二週間

巨大な隕石も、地球に接近中

あらたな内乱はおさまらず

地球大爆発まで、あとわずか

ねえ、過去に戻ったほうが

いいんじゃないか

 

次回

「思ってたより、どうにかなった」

につづく

 

 

 

 

 

モチのブルーズ

 

あわてんなよ、つまるぜおもち

急いでいると、なにも見えなくなっちまうんだけど

焼いたって、煮立って

そのままだっていいんだ

よく噛んで、感じゃだめだぜ

俺をやさしくつつみこんでくれるおもち

つまらない日なんてないんだ、おもち

 

 

ずいぶんと多忙な家柄

後輩が、会社を休んだ

お母さんが、亡くなったそうだ

 

とはいっても

実の母ではなく

いわく、「遠くに住んでいる兄弟の義理の母」

なのだそうだ

 

以前にも、こういうことがあって

まあ、この時点で

現代にはめずらしく、大家族的に

なってしまっているのだが

僕は、密かに

家系図的なものをつくって

ときおり、更新している

 

先日みると

このファイルは、共有されていて

誰でも編集可能なのだが

誰かが、その後輩の

「存在のあやうい家族の属性」を

どんどん追加しているようだった

 

この人の兄は大リーガー、妹は国際弁護士とか

 

そして最近

いよいよ、後輩の家系から

「世界大統領」が誕生

 

報告しないまでも

後輩の様子を見に行くと

きょうも、休んでいた