きようなできごと

記憶力が足りない

海岸通りで

僕が、小学校だった時

ある生徒の誘拐騒ぎがおきた

騒ぎというのも

実際は、誘拐されたわけではなく

ただ、帰りが遅くなっただけだった

はずなのだが

その生徒、仮にAさんは

クラスで、目立つタイプではなかったが

僕は、少しは話をする程度の、関係だった

ただ、その騒ぎの翌日から

以前とは、違う雰囲気になり

話をする事もなくなっていた

そして、その理由を直接聞く事も

できないままでいた

中学校は、同じ学校で

高校から、お互い違う学校へ通ったため

それきり、会う事もなかったが

そのAさんを

乗り換えのために、降りたこの駅の

向かいのホームで、見かけた気がしたのだ

乗り換えるホームと、次の電車の時間を

調べていると、視線を感じたのだ

顔をあげて、しっかり見ると

そこには、もう誰もいなかった

遠目ではあったが、あれは確かにAさんだった

駅の構内を探そうとも思ったが

きょうは、この駅の沿線でイベントが行われており

いつもよりも、混んでいたので、あきらめた

そうしていたら

僕が乗ろうとしていた電車が

この先で起きた事故で、しばらく発車できないとの事だった

一瞬、きょうはあきらめようかとも思ったが

別の線を使って、向かう事にした

こちらの電車を使えば

時間はかかるものの、たどり着けるはず

だったのだが

先の事故は、周辺沿線にも影響を与え

復旧の見込みがたたないまま

乗り換えたこちらの電車も

途中の駅で、停車し待機する事になった

僕は、とうとうあきらめて電車を降りて

駅を出た

すると、そこは

昔、海水浴に来た事が所だった

懐かしさもあり、海岸へ向かって歩き出した

子どもの頃は

とても大きな海岸という印象があったが

いま見てみると、そこまで大きくなかった

だけど、きれいな砂浜だった

渇いた風が、僕の横を通り過ぎた

海岸を、大きな犬をつれて歩いている人がいた

いいなあ、犬飼いたいなあ

ひとつ、息をはいた

いや、絶対に、犬を飼う

僕は、こころにそう決めた