きようなできごと

記憶力が足りない

増える理由

それは、確かにコンビニだった

いや、コンビニに見えた

「ああ、すげえ」

近づこうとする隊員の肩をつかみ

「待て、とりあえず調査しよう」

 

我々の船が

不時着したこの星は

ほとんどの大地が、砂漠で

ずっと、強い風が地表を撫ぜていた

隊長の私と、隊員Aと隊員Bが調査に出た

ひとつの砂山が、やけに明るく

そこには、コンビニがあった

 

それの外観は、完全にコンビニだった

道路に面した、ふつうサイズの平屋のコンビニだった

なぜだか、車の駐車スペースまであった

店内と、近くに立つ大きなかんばんから

煌々とまぶしい明かりが、砂漠を照らしていた

 

店内は

ちゃんと商品が並んでいた

先ほどまで、人がいて管理していたかのように

飲み物は、棚で冷やされ

レジ横には、おでんまであった

 

これは、まぼろしか

発見した時、真っ先に思った

長い宇宙船での旅、味気ない宇宙食

我々は、限界にきていた

そんな、我々がみているまぼろしなんじゃないか

 

「いやー、うめえなあ」

奥のほうを調査していた隊員Aが言った

彼は、棚から飲み物を取り出し、飲んでいた

「おい、大丈夫か?」

「全然、大丈夫ですよ、隊長もどうですか?」

 もらった飲み物のボトルを眺める

いたって、普通のものだった

 

「あ、ああっ」

先ほど、飲み物をくれた隊員Aが

飲み物の棚の中に、手を突っ込んでいる

「どうした?」

「なんか、奥のやつ取ろうとしたら

どんどん手が飲み込まれて」

からだごと引っ張ってみたが、まったく動かない

この冷蔵庫の中に、なにかいるのか

うしろから回ろうと、中へ入るドアを探した

 

ドアがない

あるのは、トイレのドアだけだ

この冷蔵庫には、入れない

では、中にはなにが

その間、隊員のからだはどんどん、棚のすきまに

飲み込まれていった

 

「おい、Bこっちに来てくれ」

私は、隊員Bを呼んだ

さっきから、Bはひとことも発していない

レジのほうへ回ると

隊員Bは、弁当の棚に飲み込まれているところだった

もう、足首しかない

 

ゆっくりと、床がゆれたような気がした

 

 

 

地表の調査に行った部隊が

「コンビニを発見」という

通信とともに、行方がわからなくなった

 

通信が途絶えた箇所に

確かに、小型の店はあった

しかし、報告によればひとつだったが

あわせて、4つ店は並んでいた