きようなできごと

記憶力が足りない

ゲームのはじまり

目が覚めると

床に寝ていた、知らない床だ

 

そこは

部屋というより、トイレなのか

うすい水色のタイル張りだった

ただ、ところどころ壁は、はがれ

そこらじゅうボロボロだった

 

私は

割れた鏡の前にある、洗面台

その下からのびるパイプに

片手を、手錠でつながれていた

 

私がいる場所から

ちょっと、離れたところに

なにか、ちいさな箱が置いてある

 

これは、一体どういう状況だ

 

どうして、こんな所に

記憶をたどってみる

きょうは、確か会社に普通に行って

その帰りに、駅で電車を待っていて

その後、その後は

わからない

そこで、記憶はとぎれている

 

プルル、プルル

なんなの、これは

プルル、プルル

どうして、私こんな所にいるの

プルル、プルル

一体、なにがあったって言うの

あ、電話鳴ってる

 

スーツのポケットから

携帯を取り出し、電話に出た

 

「あ、つながった、あー、もしもし」

「あ、ああ、あ」

人の声だ

普通に電話が、かかってきた

あまりの展開に、うまくしゃべれない

 

「あれ、もしもし、サラさんですか?」

「あ、はい」

知っているような、知らないような

誰の声だ

そして、なぜ私の名前を

 

「あの、ラッキーラジオ、らきらじですー」

いつも、きいているラジオのパーソナリティだった

 

「メールいただいたみたいで、プレゼント当たりましたよ」

「ああ、あ、やったあ」

そうだ、確かに送った、メールは

当たったのか、まさかな

それで、あの、この状況は

 

「それじゃあ、またメールください、サラさんでしたー」ガチャ

電話は、そこで切れた

「あの、えー、あれあの、これいまあの」

 

えー、なにこれ

電話つながるの

それで、電話関係ないの

じゃあ、この状況なんなの

 

手錠のつながれてないほうの手で

とりあえず、実家に電話した

 

ゲームは、はじまらなかった