無限の空間と救いの甘露
ちいさい頃に
病院の待合室にいると
「俺、もう一生ここから出られないんじゃないか」
っていう気持ちになった
「俺ら、もう奇妙な世界に迷い込んだんじゃないか」
って窓の外から、タモリがのぞきこんでやしないか
なんていうか
無限とも言える待ち時間
もう、なにかの手違いで
僕の名前だけが、ないとか
飛ばされちまったんじゃないかって
そんな頃に
赤ちゃんが泣いたりすんだよね
いっせいにかたまる、こどもたち
この先で、あの扉のむこうで
一体なにがおこなわれるのか(診察ですよ)
この鬱屈とした流れを断ち切るべく
ささやかな提案をするわけ
「ねえ、病院終わったらジュース買っていい?」
そうなんだな
あの甘きしずくのことを思えば
この無限の空間も乗り切れる
まあ
そんな僕も大人になって
気がついたら、2時間くらい座ってたね
まあ
具合悪いから、無限の空間どころじゃないのよ
まあ
帰りにジュースは買いましたよ、ええ