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きようなできごと

記憶力が足りない

あれの話

たけしは、都合三発の銃弾を撃ったのだ

ひとつは、彼女の眉間に

ひとつは、天井を貫き

ひとつは、冷蔵庫のとってを、粉砕した

 

むかついたから、撃った

こう、言ってやろうか

って、ばかやろう

こんな、はずじゃなかったはずだ

だって、あんな事言うもんだから

まさか、あんな事を

 

「な、ちょ、えー」

ちからなく、ラグの上にひざまずく

このラグは、彼女と一緒に買ったものだ

 

「だってさぁ、この」

華奢な本棚を、拳銃のグリップで

殴ろうとしたけれど、暴発なんてされたら事だから

そっと、床に置いた

 

「ほんと、なにー」

どうしたら、よいかわからなくなり

なんとなく、スマートフォンを取り出した

こんな時でさえ、なんとなくだ

 

「そうだ」

ずっと前に、ダウンロードした

「時間を巻き戻すアプリ」の存在を思い出した

 

「これだ」

もう、これにすがりつく以外は、考えられない

「とりあえず、さっきに戻るか」

 

「ちょっと、聞いてる?」

彼女が、話しかけてきた

生きている、彼女

俺は、涙が出てきて

彼女を、抱きしめようと手をのばしたが

その手を、荒く払われた

「ちょっと、何よ、それでね」

お互いが、お互いの腕をつかみあうかたちになった

「だから、もう、付き合えない」

さっきと、同じだ

だけど、今回は違う

「俺、ちゃんと働く

もう、就職先も見つかって、というか

受かってというか

まあ、いい感じなんだ、もう」

まあ、知り合いのつてで、どうにか

 

「まあ、それはいいんだけど

もう、だめよ」

「なんでだよ、この前は、働いてないから、って」

「そうなんだけど、あんた、あれがちいさいんだよ」

は?

「おまえ、なんだ、その、あれって」

「あれは、あれだろ、あんたについてんだろ」

 

「そういうの、言わない感じ、だろ」

「あんたさ、顔いいから、わたしもぶってたけど」

ぶっ

「なんなんだよ、あれは、あのあれはさ」

彼女は、指で示す

 

「うるせえよ、お前に、ナニがわかるんだよ」

 

たけしは、何度も何度も、撃ったんだ