きようなできごと

記憶力が足りない

会議で資料を発表しなければならない

そのプレッシャーはやがて

こんな妄想を産んだ

 

説明につまったりすると

会議室の普段開かない扉が

勢い良く開いて

そこから鬼が出てきて

私を惨殺する

 

のではないか

という恐怖にさいなまれ

なかば泣きながら資料をつくったものだ

もちろん

そんなものが出てくる扉などない

 

私の魂はまだ会議室にあるのだと思う

 

聞けば、見えてくる記憶の戦い

その時の、僕はといえば

永六輔を思い出したかった

 

大沢悠里の話題のなか

同じように、ラジオをやっている

同じ感じの人が、ほら

 

名前が、出てこない

 

毒蝮三太夫でなくて、荒川強啓でもない

ほら、ほら、ほら

人物のビジュアルは、しっかりと頭の中に浮かんでいた

ラジオなのに、外山アナしかしゃべっていない

という、エピソードも浮かんだ

だが、名前が出てこない

 

これは

僕の記憶と、僕の戦いなのだ

やはり、僕の記憶だけはある

検索したら、すぐにわかる

そんな事は、わかっている

私の戦いは、そんなものではないのだ

余計な枝葉ばかりが、思い出される

せき・こえ・のどに浅田飴

 

もうさ

俺が習った社会の先生なら

あわせて、5点くらいは、くれると思う

 

僕は、天に手を掲げ

記憶が、降りてくるのを待った

それは、まるで

ラジオの電波から、情報を取得しようとする

そんな人いましたっけ

 

その後

なんやかんやあって

僕は、無事、永六輔の名前を思い出す事ができた

 

僕が「物忘れ」をインターネットで、検索したのは

およそ、六日後の事だった

 

 

 

ゆうがた

ビデオカメラを買った

近くの公園で、息子の撮影会

なんだか、うまくピントがあわない

僕は、泣いていたのだ

僕も、こんな感じで父親に撮られただろうか

 

結局

うまく撮れなかった、帰り道

「うまく撮れなくて、ごめんな」

わかるはずもないが、言ってみた

すると、息子は

「いいのよ、いいのよ」

と、手を伸ばし二回僕の背中を叩いた

そんなの、どこでおぼえたのだろうか

 

タイムマシンを忘れて

目が覚めると、そこは病室だった

私は、思い出した

彼と展望台で、話をしていた時

バランスを崩して、柵を超えて落下

運良く着地できたが、頭を打った

頭には、包帯が巻かれている

 

彼と話すようになったきっかけは、一年ほど前

横断歩道を歩いてたら、信号無視した車に

はねられそうになった所を、むかいから歩いてきた

彼に助けられた

 

私は、思い出した

私には、使命があった

彼の過去を変えるため、未来からやってきたのだ

それを、この時代に、戻ってきたとたん忘れてしまっていた

すっかり忘れて、一年も過ごしてしまったため

もう、時間がない

私は、急いで病室を飛び出した

 

未来から来た彼女は、彼を救う事ができるのか

 

 

渋谷の路地

渋谷に、映画を観にきた

それは、彼女が観たいと言っていた映画だった

それは、とても面白くて

帰り道、ふたりで夢中になって、話をした

 

映画には

彼女に似た女優が出ていた話をすると

「あれ、私だよ」と

「そんなわけ」と返すと

彼女は、着ていた服を脱ぎ捨て

さっきまで、みていた映画の中の衣装姿になった

 

さっきみていた映画も

不夜城的な街に、映画をみにいく話だった

僕は、映画の中の登場人物だったのだ

 

You may need now read time

You may need now read time

 

本当に、ありがとう

 

ブログ買います

「ブログを、買わせていただきたいのです」

男は、そう言った

「はあ」

私は、困惑した

 

突然、訪ねてきた男は

私が、書いているブログを買いたい

という事だった

 

「それにしたって、自分で言うのもなんですが

あまりにも、内容のないというか、なんというか」

自分で、書き残していてあれだが

大した内容のないのが、ブログの特徴だったのだ

 

「申し訳ありませんが

私は、あくまで買い取りにまわっているだけで

その、選定のほうは、うちのブログ長のほうが

やっておりまして」

 

男が言うには

特別な基準を設けて、様々なブログを買っている

みんな、それなりに売っている

という事だった

 

「私のブログも、買いたいと?」

「これぐらいで、お願いしたく」

男の差し出した書類には

私が思う、売れるなら、これくらい

というよりも、2倍の値段だった

 

「ただいま、キャンペーン中でして」

さらに、数割は、値段があがった

 

「それでは、失礼します」

私は、玄関で男を見送った

時計を確認する

「あれ、もうこんな時間?」

午後から、でかけるはずだったけど

午前中は、あっという間にすぎてしまった

急いで、支度をして外に出た

 

彼女は、ブログを売ってしまった

彼女が、ブログを書いていた記憶も

データも、そして

ブログを売った記憶さえも、買い取られた

買い取られたブログの行方は

誰にもわからない

 

外見より内面、とはいえども

やっぱりさ

いきなり、社長の所に行って

「僕、優秀だよ、欲しいよね?」

とは、行かないわけじゃない

 

まず、問い合わせて

書類送って

面接、何回かやって

それで、社長と面接するでしょう

そこで、ようやく

「あなたは、どういう人なんですか」

って所に、来るわけだ

 

逆にさ

社長だとして

なんか、きっと優秀そうな人をみつけて

「君に、決めた」

つって、採用通知を渡したらさ

「いやいや、あなたの会社受けてませんし」

ってなる

 

そこで

壁の落書きは、終わっていた

それにしても、紙がなくて

誰も来なくて、携帯も電池切れで

身動きが取れない