きようなできごと

記憶力が足りない

あの、エクセルとかは

つまり

シィピィユゥのヴァイブスをね

この、指先から感じとる

というわけ

 

マウスでまわすカーソル

我の思考は加速

夜の嗜好はハイソックス

 

 

わずかなる波動のブレも

マウスとカーソルから

感じとりましょう

やがて、アプリケーションも

ファイルも、フォルダも

Folder5

あなたと、わたしの一部に

なるでしょう

 

講師はそこで

噴き出た口角の泡を拭った

 

僕は思った

「とんでもない所に来てしまった」と

 

 

パソコン教室「ため息の黄昏」は

現在、営業していない

繰り返しの日々

僕は、ゆっくりドアを開けた

 

 

「先生、よろしくお願いします」

この先生の所に来るようなって

どれくらいだろう

ずいぶん、長い間

お世話になっている

 

病気ほ

一向に回復の兆しを見せない

「きょうは、どうですか?具合は」

 

僕は答える

「ええ、まあまあです。ただ」

「ただ?なんですか」

 

僕は迷う

まさか、この診察が

ずっと同じことの、繰り返しの

ように感じているなんて

先生に、言えやしない

でも、僕のなかで

それは、ふくらんて

おさえきれなくなっていたんだ

 

「なんというか、繰り返しというか」

「繰り返し?なにがです」

まずかっただろうか

「あの、この診察があの」

あせる、うまく言葉が出てこない

先生は、僕をじっと見ている

 

「そうなんです」

「えっ」

「いつも、同じように」

 

先生が言うには

それにより、こちらの

細かなことばや、動きを見ている

ということだった

 

僕は

コンピュータかなにかに

操られていて、同じ質問

同じ答えを

ただ、繰り返している

だけなんじゃないかって

 

先生は、笑って言った

そうだとしたら

相当複雑なことしてるね

そのコンピュータとやらは

 

そして

君は、少ないとも快方に

むかっている

また、一週間後に

ということだった

 

僕は

頭を下げ、部屋を出る

 

よかった、安心した

 

 

でも、待てよ

やっぱり、おかしくないか

先週も、その前も

同じ質問、同じ答え

 

もう一度、確かめよう

 

 

 

「あれ、なんですか?」

「あれは、今度導入される

エキストラロボの、医者と患者だよ」

 

 

僕は、ゆっくりドアを開けた

 

 

 

もう疲れたあ

最近、タイヤ屋増えてない

と、言ったのは

彼女だった

 

そんな感じはしないけど

僕は答える

 

駅前のタイヤ屋のあとに

また、あたらしいタイヤ屋が

できたこと

二件のタイヤ屋が

あった所に

大きなタイヤ屋ができたこと

彼女は、タイヤ屋のことを話した

 

僕は、話を切り出せない

なぜなら

僕の決まった就職先は

となり駅にある、タイヤ屋

なのだから

 

彼女は

静かに、新聞にはさみこまれた

大量のタイヤ屋の広告を切り裂く

 

うちの裏の

タイヤ屋の搬入の音が

大きく響いた

 

 

 

Can I see but read

これは、私が体験した話です

 

その日は

朝から調子が、悪くて

起きたんですけど

また、寝たんです

 

寝たか、寝ないくらいに

股間のあたりを

鷲掴まれる、あの感触に襲われました

 

私は、思った
「ああ、金縛りだ」と

 

でも、その時の

私の反応ときたら

「おいおいおい

俺を布団から、出そうと

するんじゃないよ

頭を、つかむのをやめろ!

寒いから、布団に戻せ!

引きずり出すんじゃないよ」

と、いう反応でした

 

これは

どんなに、こわい話が好きでも

実際に、霊体験があったとしても

体験談を話せる日は、遠い

そう、思った

 

もちろん

その後、寝てスッキリしました

 

 

 

本当にあった事だったら

なにか、悩んでいるんでしょう

彼女は、言った

視線を、天井にとどめながら

 

ああ、まずい

でも、もう遅かった

 

それは、私に関することじゃないよね

 

僕が予約していた

back number の曲が、流れる

彼女は、うつむいたママだ

 

僕は、静かにマイクを、手に取った

 

そんな

機能は、ないはずなのに

部屋が、少しだけせまくなって

うすいブルーに、つつまれた

 

ドラえもんでも無理

やっぱり、書けない

もはや、僕には資格がないんじゃないか

年賀状

 

もう、何年になる

そうじをしては、机にむかい

歌合戦の合間に、机にむかい

まあ、結局書けない

 

わかっているからだ

書けたとして

送れたとして

「なに」にもならないことを

 

来年の、豊富

年賀状が、書けます、ように、と

 

そう書いて

年賀状は、ぶん投げた

本棚のすきまに吸い込まれた

これで、届く未来、はやく来いよ

 

ゲームのはじまり

目が覚めると

床に寝ていた、知らない床だ

 

そこは

部屋というより、トイレなのか

うすい水色のタイル張りだった

ただ、ところどころ壁は、はがれ

そこらじゅうボロボロだった

 

私は

割れた鏡の前にある、洗面台

その下からのびるパイプに

片手を、手錠でつながれていた

 

私がいる場所から

ちょっと、離れたところに

なにか、ちいさな箱が置いてある

 

これは、一体どういう状況だ

 

どうして、こんな所に

記憶をたどってみる

きょうは、確か会社に普通に行って

その帰りに、駅で電車を待っていて

その後、その後は

わからない

そこで、記憶はとぎれている

 

プルル、プルル

なんなの、これは

プルル、プルル

どうして、私こんな所にいるの

プルル、プルル

一体、なにがあったって言うの

あ、電話鳴ってる

 

スーツのポケットから

携帯を取り出し、電話に出た

 

「あ、つながった、あー、もしもし」

「あ、ああ、あ」

人の声だ

普通に電話が、かかってきた

あまりの展開に、うまくしゃべれない

 

「あれ、もしもし、サラさんですか?」

「あ、はい」

知っているような、知らないような

誰の声だ

そして、なぜ私の名前を

 

「あの、ラッキーラジオ、らきらじですー」

いつも、きいているラジオのパーソナリティだった

 

「メールいただいたみたいで、プレゼント当たりましたよ」

「ああ、あ、やったあ」

そうだ、確かに送った、メールは

当たったのか、まさかな

それで、あの、この状況は

 

「それじゃあ、またメールください、サラさんでしたー」ガチャ

電話は、そこで切れた

「あの、えー、あれあの、これいまあの」

 

えー、なにこれ

電話つながるの

それで、電話関係ないの

じゃあ、この状況なんなの

 

手錠のつながれてないほうの手で

とりあえず、実家に電話した

 

ゲームは、はじまらなかった

 

泡のむこうで、夏が終わった

こんな

暑い日には、よく炭酸飲んでたわけですよ

こどもの頃なんかは

 

おとなになってからは

糖分とか、気になっちゃって

炭酸水なんて、飲んでるんですよ

 

甘さとか、味っていうより

あの、のどのシュワシュワが欲しいだけ

だったんだなあ、っていう結論

 

でも

たまにだけど

甘い炭酸も、飲むんだけど

なんというか

思ってたほど、おいしくないんだよね

同じ銘柄のやつだから

味は、同じなんだけど

なんか、足りない

 

思えば

家でも、ゲームする時とか飲んでたんだけど

やっぱり、外で飲んでたんだよね

屋外ってわけじゃなくて

出かけた先でね

 

だから

それが、おいしかったみたいなんだよな

どっかでかけて、どっかで飲むやつ

家族とか、友達とかと飲むやつ

あれが、おいしい

あの、楽しいが、おいしいみたい

 

それを

炭酸飲料から、たのしいを引き出したかったみたい

さすがにそれは、炭酸飲料も、荷が重いよな

 

「あの、楽しいが、おいしいか」

ひとりごちてみた

 

「なにそれ」

そんな風に、言うように

グラスの中の氷が、音を立てた