きようなできごと

記憶力が足りない

半透明

大切な鉄道模型コレクションを

処分した次の日

お父さんは、だいたい半分くらいになった

 

なにが?

からだが半透明になったのだ

 

それでも

お父さんは

あまり気にしていない様子だったから

わたしもなんだか笑った

 

でもそれから

お父さんの存在感も半分くらいになった

 

時々家からいなくなる

もちろんいる日もある

ただ

気がかりなのは

他の家族は

それをまったく気にしている様子がないことだ

 

このままだと

本当に消えてしまいやしないか

わたしは

手放した鉄道模型

取り戻そうと

家族に相談したが

 

そんなもの

そもそもあったか?誰のもの?

お父さんとの記憶自体も

なんだか消えかかっていた

 

お父さんを探す

どこにもいない

お父さんは縁側にいた

前よりも薄く

四分の一くらいにうすくなっていた

 

わたしだけでも

お父さんとの思い出を

大切に

思い出

誰との?

 

つめたい風がふきぬけた

それは

「ありがとう」と聞こえたが

たぶん気のせいだ