きようなできごと

記憶力が足りない

となりの部屋のヤツがとにかくうるさい


俺はいらだっていた
となりの部屋の住人が
とにかくうるさい

 

現代には
めずらしくも
ひっこしのあいさつに
やってきた時
はじめて会ったが
やせ型のおとなしそうな男
だったのに

 

夜になると
部屋の中で暴れだすようで
長く続くことはないが
うるさいことはうるさい

 

うちは
アパートの二階
三部屋あるうちのまんなか


だから
時々は
ヤツの部屋側の壁を
おおきな音を鳴らして
たたいてやった

 

すると
しばらくはおさまる

少し時間をあけて
また暴れだす
俺はついに
壁をたたきながら
「うるせえぞ」
とどなるようになった

 

大家さんに
相談をしてみると
ヤツはすぐに出ていく
一時的なものだから
と言って
それ以上は話をしない

 


ある日の夜
またいつもの如く
ヤツは暴れだした
だが
きょうは様子が違う
なんというか
いつもより人数が多い
そんな気がする
それにすぐに静かになり
また
外へ出ていく音がした

 

俺は
自分の部屋を少しあけて
ヤツの部屋の玄関あたりをみた

ドアが開け放してある

俺は
すぐにヤツの部屋の様子を
確認に行った

 

部屋は
あらされており
ところどころ
血しぶきが飛び散っていた
一体、なにがおこったのだろう

 

複数人いて
部屋にヤツはいない
ということは
連れ去られたのではないか?

 

急いで警察に
とも思ったが
俺は自分の痕跡を
残さないように
そっと自分の部屋にもどった

 

そして
「やったぞ、これで静寂が」
俺は自分の部屋でさけんだ

 

その時
玄関から物音がした
そうだ
となりのヤツがいなくなった
あまりの喜びに
玄関をしめていなかった

 

そこには
男が立っていた

「あ、どうもこんばんわ」
俺はあいさつをした
こいつは
ヤツと反対側のとなりの住人だ

 

彼は
長い包丁をにぎっていた
「おまえ、いつもいつもうるさいんだよ」
俺は
その包丁で何度も何度も
刺された

 

部屋は
とても静かになった