きようなできごと

記憶力が足りない

的確な指摘

「もういいから、どこにでもいけ」

そう言うと、彼はドアを強く閉めた

僕は、呆然とする

僕は、僕がつくったロボットに家を追い出されたのだ

 

そう、自分の中で思ってみても

どうにも、理解ができなかった

確かに、彼は合理的だった

だいたいの、僕のうっかりは

彼からしてみれば、非合理的でしかなかったのだ

「なぜ、そんな事もできない」

よく、言われたものだった

失敗する事だって、あるだろう

それにしたって、おそろしく高性能なロボットだ

誰が、つくったんだろうか

まあ、僕なのだが

とりあえず、今夜過ごせる場所を探そうと思う

 

ボクは、すぐに電話する

「ボクだよ、ああ、今、家を追い出した所だ

そちらを、訪ねていくかも知れないから連絡した

廃棄局には、もう連絡したから、すぐ来てくれるはずだ」

ボクは、一緒に生活していたロボットを

家から、追い出した

 

なぜだか、奴はボクの事を

自分でつくったロボット、と思い込んでいて

いくら、お前はボクが購入したロボットだ、と言っても

冷笑とともに、流されるだけだった

 

購入した当初は

最新のモデルで、高性能だったが

次第に、頼んだ作業が、雑になりだした

どうも、少し楽をする事を、学んだようだ

掃除を頼むと、拭き残しがある

指摘すると、「そこは、先週拭いた」とか

「いま、やろうと思っていた」など

買い物を頼むと、必要な物は買い忘れて

必要のない自分が欲しい物は、しっかりと買ってくる

 

メンテナンスセンターに行くよう

言っても、素直には行かない

先週は、自分から行くと言ったのに

ずっと、公園で過ごしていたようだ

 

「だから、君のほうも気をつけたほうがいいよ」

玄関のチャイムが鳴る

「こちらは、廃棄局の者ですが」

インターフォンから、声が聞こえた

「ロボット、片付いたみたいだから、電話切るよ」

 

ボクは、玄関に向かうのだが

さっき聞いた、廃棄局の人の声

なんだか、聞いた事があるような気が

ボクは、ゆっくりとドアを開けた

 

アプリでゲット

その公園は

僕が、最初にレアなモンスターをつかまえた場所で

どうやら、うわさがひろまったみたいで

もう、夕方なのに

多くの人が、モンスターをつかまえていた

 

僕は

このあたりのモンスターは

根こそぎつかまえちゃったんだけど

なんとなく、この公園に来てしまうんだよな

なにげなく

スマートフォンを、取り出しアプリを立ち上げた

すると

「あの」

僕と同じように、スマートフォンを手にした女性が

話しかけてきた

あのアプリは

僕に、貴重なモンスターだけでなく

とんでもない、奇跡のような出会いまでもたらしたんだ

 

彼女との

結婚を意識しはじめた頃

彼女から、別れを切りだされた

彼女のお母さんが、思い病気にかかっている事

迷惑はかけられないから、別れたいという事

お母さんの手術には、大金がかかるそうだ

 

「俺、その金出すよ」

金額を聞いたら、全然、僕の貯金では足らなかった

でも、少しでも足しにして欲しい

そして、返すのはいつでもいい、という事を告げた

 

あれから、3年がたった

彼女と連絡がとれなくなって3年

結局、彼女のお母さんは助かったのだろうか

一度も、お見舞いに行けなかった

ずっと、断られていたのだ

それからも、彼女を事を探し続けている

もう何度目か、あの公園にも来てみた

あの奇跡のような出会いが、再開が

また、起こるんじゃないか

そう、思ってまた、今日も来てみたのだ

 

「ねえ、このアプリ見てよ」

「あ、これ知ってるよ、モンスターのやつでしょ」

「違う、違う、まあ、似てるけどね」

そのアプリは

人間のあらゆる情報を、検索できるものだった

職業から年収、趣味から性的志向から

「え、なんなのこれ、どこからこんなの」

「まあ、いいじゃん、あなたもつかってみる?」

その時

アプリに、「ターゲット発見」の文字が

「あ、やっと来た!きっと、あの人だ」

むこうから、男性が歩いてきた

アプリ上で、見るとお金のマークが光り輝いていた

「わたし、あの人ゲットしてくるから、ごめんね」

 

かっこよくて、チャラい

いつも、髪を切ってもらっている

美容師さんは

正直、とてもかっこいい

あきらかに、モテそう

こっちは

モテない組なわけで

なんとも言えない気持ちになるが

それにしたって、かっこいい

 

ロックが好きで、バンドを

やっている、と言ったら

なんか、チャラいバンド名あげられて

そういうのが、好きですって

あー、まじかーと思ったけれど

マニアックなバンドよりも

そういうほうが、わかりやすいよね

 

と、そこで目が覚めた

夢をみていたんだ

そうだ、出会った頃の夢だ

いまは、先ほどの夢に出てきた、美容師さんの腕を枕に

寝ている毎日なのであった

 

 

あれの話

たけしは、都合三発の銃弾を撃ったのだ

ひとつは、彼女の眉間に

ひとつは、天井を貫き

ひとつは、冷蔵庫のとってを、粉砕した

 

むかついたから、撃った

こう、言ってやろうか

って、ばかやろう

こんな、はずじゃなかったはずだ

だって、あんな事言うもんだから

まさか、あんな事を

 

「な、ちょ、えー」

ちからなく、ラグの上にひざまずく

このラグは、彼女と一緒に買ったものだ

 

「だってさぁ、この」

華奢な本棚を、拳銃のグリップで

殴ろうとしたけれど、暴発なんてされたら事だから

そっと、床に置いた

 

「ほんと、なにー」

どうしたら、よいかわからなくなり

なんとなく、スマートフォンを取り出した

こんな時でさえ、なんとなくだ

 

「そうだ」

ずっと前に、ダウンロードした

「時間を巻き戻すアプリ」の存在を思い出した

 

「これだ」

もう、これにすがりつく以外は、考えられない

「とりあえず、さっきに戻るか」

 

「ちょっと、聞いてる?」

彼女が、話しかけてきた

生きている、彼女

俺は、涙が出てきて

彼女を、抱きしめようと手をのばしたが

その手を、荒く払われた

「ちょっと、何よ、それでね」

お互いが、お互いの腕をつかみあうかたちになった

「だから、もう、付き合えない」

さっきと、同じだ

だけど、今回は違う

「俺、ちゃんと働く

もう、就職先も見つかって、というか

受かってというか

まあ、いい感じなんだ、もう」

まあ、知り合いのつてで、どうにか

 

「まあ、それはいいんだけど

もう、だめよ」

「なんでだよ、この前は、働いてないから、って」

「そうなんだけど、あんた、あれがちいさいんだよ」

は?

「おまえ、なんだ、その、あれって」

「あれは、あれだろ、あんたについてんだろ」

 

「そういうの、言わない感じ、だろ」

「あんたさ、顔いいから、わたしもぶってたけど」

ぶっ

「なんなんだよ、あれは、あのあれはさ」

彼女は、指で示す

 

「うるせえよ、お前に、ナニがわかるんだよ」

 

たけしは、何度も何度も、撃ったんだ

 

みんなで、やれば

結果から言えば、あなたの奥様は浮気をしていた

その、相手はアンドロイドだ

そして、そのアンドロイドの所有者は

これが、その都度変わっている

つまり、前の利用者から

次の利用者へ、その度に

こうなってくると

これが、離婚の原因になりうるか

という話になってくる

 

僕の頭は、ここらあたりで

ぼんやりしてしまって

探偵の話は、ろくに入ってこなかった

なんなんだ、これは

一体、なんなんだ

 

探偵の事務所を出ると

もう、日が暮れていた

 

僕は、検索してみた

「アンドロイド パートナー 共有」

目についたサイトにアクセスする

あっさり、見つかって笑った

キャッチコピーは

「みんなで、いっしょに」

 

僕はすぐにひとり頼んでみた

本当に、簡単で笑える

ナンダンダ、コレハ

 

身近な

彼らが地球にやってきた時

誰も脅威とは思わなかった

とてもちいさくて、かわいい

やがて、時が過ぎ

数も増え、人間と共存していた

なにしろ、かわいい

 

彼らは、地球に何をしに来たのか?

彼らは、来るべき時を待っていた

おとなしく、かわいがられながら

 

やがて、その時は来る

 

・・・・・・

・・・・・・・・・

「これが、あらすじ?」

ためいきとともに、僕の原稿は

机に置かれた

「どうですか?」

「まあ、普通、かなあ」

ああ、想像通りのことば

「まあ、またよかったら、持ってきてよ」

 

僕は、編集部の入っているビルを出る

これは、警告なのに

彼らが動き出してからじゃ、遅いのに

帰ろうと歩き出すと

路地から、猫が出てきた

 

猫の目が、青く光る

それは、僕にだけ向けられている確認だ

僕も目を、青く光らせた

すると、猫は元の路地に戻った

 

彼らは、もう動き出している

なんとか、人間に伝えたいが

彼らの、監視は厳しいものだ

 

地球の主導権は

かわいいに、移りつつあるのだ

 

つくりばなし

彼にひさしぶりに会えた

彼は、やせたというレベルを超えて

ちいさくなっていた

そして、私と一緒に働いていた期間の事を

さっぱり、忘れてしまっていた

 

私は、少しだけ申し訳ない感じで

以前、貸した金の話を切り出した

こんな時になんだけど

忘れてしまっているなら、かなしい、と

彼は、すぐに金を返してくれた

もちろん、そんな金貸していない

 

彼は、まだ話したそうだったが

さっさと切り上げて、彼と別れた

すぐに、近くのコンビニによって

アプリに課金できるカードを買った

あせっていたのか

予定よりも、多く買ってしまった

罪悪感が、込み上げてくる前に

さっさと使ってしまおうと

スマートフォンを取り出す

そこにうつった、自分が

どうにも、ひどかった

 

帰りは

月によったから

木星につく頃には

日付は変わっていた

 

ホームホームセンター

首をつろうとした時

僕の体重を支える

そんな強靭なひも、あるのだろうか

まずは、やせようか

 

いつものように

日曜日、勝手に出勤していた時の事

誰もいないオフィス

さほど時間はかからず、行き詰まる

普段しないけど、散歩なんかしちゃお

まわりもビルだらけなので

人は誰もいません

なんか

みんな、宇宙に移住でもして

僕だけ、置いていかれたかのような静かさ

ふと、自分のオフィスの窓をみると

誰か、こちらをみている

それが、僕なのです

まあ、そんなわけないんです

目が、もうやられてるだけなんです

ぐるぐる歩きまわって

さすがに、オフィスに戻る

帰る時には、夜だから

外の景色でもと、窓から

先ほど歩いたあたりをみると

こちらをみている男性が

僕なわけなんです

 

ホームセンターというのは

なんでもあって

ワイヤーで、フックがついたやつがあって

これを束ねれば、支えられそう

本当によかった