きようなできごと

記憶力が足りない

先生、きのこになる

「この先生、きのこるのは」

教室は、静寂につつまれた

直後、笑いの渦は、僕を飲み込んだのだ

ひぃひぃと、息をつきながら

体勢を整えた教師は

「先生は、きのこになる予定はないぞ」

 

授業終了のチャイムが鳴り

授業が終わっても、僕は呆然としたままだった

 

僕は

この先、生きのこる、事ができるのだろうか

 

君の雫に恋をした

君の事、ずっと前から知っていたけれど

こんな気持ちになったのは、はじめてだ

 

たまたま、みかけたんだ

君は、とても輝いていて、まぶしい

誰よりも、一番声が出ていたし

ジャンプの高さも、一番高かった

 

突然

こんな事言われても

びっくりするかも知れないけれど

本当の気持ちです

 

ふなっしー

君の、梨汁浴びたいんだ

 

これは、誰が書いたか

先日、親戚が家に来ていた時の事です

お昼ごはんを食べていると
電話が鳴ったので、僕が取りました

それは、家族を装う詐欺の電話でした
僕は常々、そういう電話がかかってきた場合
その、架空の息子に対して
架空の父親を演じきりたい、と思っていました
相手の会話に合わせて
分岐する台本を作成し、演技の鍛錬をつみました
台本は、「最後こちらが泣いて、感動パターン」や
「相手が泣いて、感動パターン」から
「人生のやり直しを説得パターン」など
およそ、60パターンと、ボーナスシナリオを追加
そうして、備えた日々が
偶然にも、聴衆(親戚)もいる中、本番を迎える事ができたのです
受話器を持つ手に汗を感じながら、演じました
どうにか、僕が泣いて終わるパターンに持ち込み
相手から、「片付いたら、帰るわ」
という言葉を引き出し、上演は終了しました

ところで
彼が、僕が知らないだけで
本当に生き別れた息子である可能性は
何パーセントになるでしょうか?

っていう、質問があったわ
パーセントて、パーセントて

彼が見せてきた画面には
そう、ブログに書いてあった

「これが、どうしたんですか?」
「いや、なんか面白くない?
本当にこんな、質問あったのかね」
「どうして、これを見せたんですか?」
「いやいや、つまらなかった?
悪かったよ、忘れてよ」
「この、電話をかけたの私なんです」
「えっ」
「それを、知ってて見せたんですか?」
「いや、知らないよ」
「最後、私が言った言葉もあってますし
この方の、知り合いなんですか?」
「いやいやいや、たまたま見たブログに
これが、書いてあって」
「私を、つかまえようって、事ですか」
「いや、そんなつもりは」

私達は
せまいロッカーの中
ほとんど、抱き合った状態で
言い争いを続けた
ロッカーをのせたトラックは、まだ止まる様子がない

っていう、質問が

っていう、ブログが

っていう、話を聞いて

っていう

っていう

っていう


やがて
僕は、宇宙に
君は、星に

大きく僕達を包む光は
宇宙がひろがるスピードを超え
世界は、光に満たされた

という、ブログ記事
 

新入社員の、大いなる目標

この四月から、社会人

いよいよ、会社に務める事になる

他の新入社員とは、違って

僕には、大きなひとつの目標がある

それを成し遂げるためには

努力は惜しまないつもりだ

 

最初のうちは

様々な部署で、いろいろな仕事の様子を

見せてもらったり、研修の毎日だった

 

事件は、研修最終日に起こった

 

会社で使われるデータが集められている

データ室で、おかしな動きをしている人物を見つけた

僕はすぐに、上司に報告し

そいつを、捕まえた

先輩社員だった

データを盗み出し、他企業にでも売り飛ばす

つもりだったのだろうか

 

入社早々

僕は、社員の信頼を勝ち取るだろう

僕の目標は

この会社で、えらくなって

データを扱えるようになったら

それを、他社に、売り飛ばす

そう、僕はスパイなのだ

なので、この会社にスパイはひとりでいい

僕、ひとりでいいのだ

スパイの道は、とても厳しい

 

研修の終了と、共に

新入社員歓迎会がひらかれた

社長の話の際

僕はみんなの前に呼ばれた

「今日で、研修が終了したけれども

なんと、新入社員の彼が

先輩社員の、不正を暴いたぞ」

どよめく、一同

とても、気分がいい

「捕まった、君もうかつだったね」

僕が捕まえた、先輩社員も

みんなの中で、笑っていた

 

どういう事だろうか

会社に損失を与えかねない事態だったのに

厳しい処罰があるはずなのに

僕は、動揺を隠せなかった

 

「ああ、驚いているようだね」

社長は、僕の様子に気が付き、そう言った

僕は、混乱して汗が止まらない

 

「君には、まだ言ってなかったが

彼も、君と同様にスパイなんだ」

ぐらりと世界が歪んだ気がした

なぜ、社長は僕がスパイだと

 

「ここにいるみんなも、スパイ

そして、私もスパイなんだよ」

 

社長が言うには

あらゆる局面への、対応が求められるのが、スパイ

様々な人員が、必要になる

そのために、ひとつの会社を設立して

あらゆる事に、対応できるよう備えているのだ、と

 

普通の会社員が、他社に潜り込む事もあれば

受付対応する女性から、食堂勤務、

館内の清掃員まで

どんな場合にも、対応できる人材を育てる

そういう目的があったのだ

 

そうか

ここには、僕以外の人間も

僕と同じ目標に向って、進んでいる

そう思うと、なんとも心強い会社ではないか

僕は、本当に嬉しくなった

 

「では、そろそろ乾杯といこうか」

その、社長の声を共に

それぞれが、飲み物を手に取った

 

「それでは、新入社員諸君の

大いなる未来に、乾杯」

 

僕は、その記念すべき一杯を

一気に飲み干した

 

 

 

「将来有望だと、思ったんだけどな」

早くも、散り始めた桜を

窓から眺めながら、社長はひとりごちた

 

新入社員研修後の、宴会の乾杯

一杯目には、必ず

毒のスペシャリスト特製の毒が盛られており

それを、新入社員が、どう回避するのか

それが、この時期の先輩社員達の

ひとつの楽しみでも、あった

 

ある者は

ひとくちだけ含み、グラスを投げ捨て

ある者は

あらかじめ、解毒剤をくちに含んで望んでいた

 

「教科書の1ページ目に、書いてあると、思うんだけど」

社長は、本部に送る資料をまとめた

「スパイの道は、とても厳しいな」

 

ネットこわい

「ねえ、この先の所さ

石原さとみのくちびると、同じ感じするよ

触ってみなよ」

そういって、彼女はペンを差し出した

 

僕は、じっくりとペンを眺めると

「いや、いいよ」

と断った

 

「なんで、なんでよ

触りなよ」

ペンの先を触りながら、彼女は言った

 

僕は、触りたかったけれど

そんな簡単ではないぞ

という意思のようなものを

示してやりたかったんだと、思う

「大丈夫、触らない」

 

何が、大丈夫かはわからないけど

 

「そっか」

彼女は、席をはずした

 

僕は、思った以上に

先程のペンを、眺めた

まあ、確認

それほどまでならば、確認の必要は

あるんじゃないか

石原さとみか、どうかはわからないが

確認したって、いいじゃないか

 

僕は、ペンを手に取り

ゆっくりと、その部分を触ってみた

 

指先に、ビリッとした刺激が走り

それは、背筋を通り、全身を駆け抜けた

 

その模様は

目の前の、本棚の隠しカメラ

天井の隅のカメラ

右手側にあった、カゴにしかけられたカメラ

で収録された映像が

ドッキリ映像風に編集され

彼女の、YouTubeチャンネルにあがっていて

その映像の僕は、何度も何度もしびれていて

本当に、ネットこわい

そう、思った

 

1/4泣いています

涙が出るという事は

よくあった事ですが

ここ最近、さらに出るのです

 

もはや、物語などで

「この先、こうなるんじゃないか?」

と、予想して涙が出るのです

 

半分泣いているのを、半泣きと言いますが

私の場合、常に1/4は、泣いているようなものです

そういう場面が、あれば

すぐに、半泣き、そして、全泣き

やがて、平和に

 

だから

私の部屋から出る、ごみは

「その時、出た涙をぬぐったテッシュ」

の、割合が多いわけです